堀場雅夫(堀場製作所会長)の最新刊「人の話なんか聞くな!」(ダイヤモンド社)を読んでいる。
タイトルが笑う。
『人の話なんか聞くな!』なら、この本を読むこと自体必要ないということになる。
「人の話なんか聞くな!」と主張する人の話は聞いた方がいいのかな?
堀場さんのベストセラーに『イヤならやめろ!』というのがあった。
だいたいが、社会人に向けたメッセージ、いわゆるビジネス本である。
私は、一人の経営者として参考にさせていただいている。
とはいえ、そこに書かれてあることに「目から鱗が落ちる」ようなものは少ない。
ほとんどが、自分の考えと同じであることを確認する為に読んでいるようなものだ。
ただ、今回の「人の話なんか聞くな!」だが、そのまま解釈すると唯我独尊で生きろ!みたいな話になる。
自分がそう思ったら、人が何を言おうと聞いてはいけない、ということに。
もちろん、そんなことは書かれていない。
自分で考えるのが邪魔くさいとか、自分で考えて無駄に時間を過ごすよりも、他人に聞いた方が合理的だと思う人が増えているという警鐘なのだ。
安易に人に答を求めるな、つまり人の話なんか聞くな!になるらしい。
でも考えることって、意外と辛いものだ。
経営者となると、何でもかんでも自分で考えないといけない。
人の意見は参考にはなるが、それに依存してしまうと何かで挫折した時にリカバリーできなくなるのは確かだ。
企業家が、高名な占いの先生に頼るなんて話をよく聞く。
神社で高い祈祷料をはらって、事業の成功を願うというのも日常茶飯事だ。
自分の考えだけでは、どうも自信が持てない。
その時に、人の考えも聞きたければ、神仏のお告げも聞きたくなるものだ。
占い師もそうだが、コンサルタントと言うのも、ある意味お告げを伝える為に存在しているのかもしれない。
そういう意味なら、いくら自信がないからと言って、深く考えもせず、こういう連中に頼るのは問題といえば問題だ。
この本の中で、一番同意するのが、頼みごとは忙しい人に頼めということ。
忙しい、忙しいと言っている連中ではない。
堀場さんは、忙しいと言うやつほどヒマな奴だと言っている。
本当に忙しい人は、段取りがうまい。
仕事の処理もたんたんとこなし、合理的で無駄がない。
だから、多くの仕事を短時間でこなせる。
こういう人に仕事を頼むと、例え忙しくとも「いついつまででよければいいですよ。」と答えてくれるだろう。
これをヒマな人に頼むと、時間ばかりかかって、ろくな仕事ができなかったりするものだ。
忙しい、忙しい、と口で言っているような連中は、段取りが悪いから効率が悪くなるのである。
忙しそうにするエネルギーがあるなら、仕事の処理に使いたまえ。
私、会社に入った時に、これを痛感した。
自慢めくが、私は仕事の処理が早い。
大体の仕事は、どれぐらいの時間がかかるか勘でわかるのである。
入社したころの仕事なんて、単純なものばかり。
1日8時間労働なわけだが、そんな単純な仕事、2時間もあれば簡単に済んでしまう。
相手がいて、その人のスピードに合わせる作業なんて苦痛以外の何ものでもなかった。
あんたはいらん、私一人でやる!と先輩に対して何度も思った。
特に、自分が使われる側になると死ぬほど思う。
こうしろ、ああしろと指示があるのだが、こういう結果が出したいなら、こうしてああした方が速いと私はよく言った。
まさにその通りなのだが、こんなこと言う社員はたいてい嫌われる。
オレの言う通りにしていれば良いのだ、オレは何年もこの作業をやってきたのだから、とよく言われた。
なるほどねえ、それで忙しい忙しいと言っているわけだ。
ああ、こういうこと書いていると、昔あった色んなことが思い出されて来る。
世の中に、ヒマ人どもがどれほど多かったことか。
本当に忙しい人の見分け方をひとつだけ伝授しよう。
それは、その人が仕事に関する情報を発信しているかどうか。
次々と新しい情報を伝えてくれる人なら、本当に忙しい人である。
忙しがっているだけの連中は、自分の過去の話しかできない。
古い情報を嬉しそうに喋っている人には、仕事においてはなるべく近寄らないことである。
つきあうだけ無駄だと思う人も多いが、かといって無視すると邪魔されかねないので気をつけないといけない、それとマイナスのエネルギーを発生させている人にも気をつけましょう、自分のエネルギーを吸い取られかねないから、安部邦雄