アーチストの生きざまが変わる(その3)
◎音楽配信事業者はどうやってアーチストを集め、商品化していくべきか
アーチスト論の最終回である。
先日、ある会合で、これからの音楽配信業者は今の音楽業界の中で戦うべきではなく、別のマーケットを構築していく必要があるということを語った。
ファースト・マーケット(今の音楽業界)で商売するのではなく、新しくセカンド・マーケットをクリエイトし、そこにアーチスト(商品製造業者)とユーザー(商品購買者)を誘導する、それが私の提言である。
音楽配信はファースト・マーケットに頼らず、セカンド・マーケットで
手段は勿論インターネットであり、それゆえ基本的にこのマーケットはバーチャルなものとなる。(実体的なマーケットが今の音楽業界ということになる。)
バーチャルなマーケットに特化した商品化政策(マーチャンダイジング)のアイデアこそ音楽配信業者に必要となってくるはずだ。
既に業務を開始している音楽配信業者にはこのポリシーがない。
ファースト・マーケットの中間をカットする意識はあっても、バーチャルな商品展開のノーハウがない。(勿論、現段階でそんなものは育っていないが)
アーチストに対する有効なインセンティブもなければ、ユーザーのマーケティングもほとんどできていない。
これで利益が出る程、商売は甘くないと思う。
アーチストに対するインセンティブ
将来的な話は横に置いて、当面の話を書こう。
まず、魅力的な制作環境を作ることだ。バーチャル空間においての魅力的な音楽作りの方法を提示すること、まず、作業はこれから始めねばならない。
アーチストの制作環境をまず、ウェブサイト上に用意する。勿論、最高のアプリケーション・ソフトが完備された環境だ。
次に、その作品を商品化する為の方法論の完備である。
作業的には、現レコード業界が行っていることとさほど違わない。
ただ、プロモーションの方法論はいくぶん違ってくるかもしれない。いずれにせよ、現レコード会社におられる宣伝マンの方々の参加が必要となるだろう。
アーチストにセカンド・マーケットを認知させる
アーチストはこの作業を通じて、セカンド・マーケットが自己実現の為の場であることを認識するはずだ。
勿論、初期的には、この作品を持ってファースト・マーケットで勝負するのは自由だ。 セカンド・マーケット(バーチャル・マーケット)はファースト・マーケットを弾圧したりはしない。
例え、その逆はあったとしても。
インターネット上のマーケットはしばしばコミュニティ化するとよく言われている。 それゆえ、このセカンド・マーケットは、マスとしてとらえるのではなく、コミュニティ的にとらえるべきかもしれない。
前にも言った、インターネット=フリマ論である。(フリマ=フリーマーケット)
セカンド・マーケットはフリーマーケットと類似
セカンド・マーケットでは、このフリマの方法論がとても役に立つはずだ。
それゆえ、音楽配信事業には、できればフリマ関係者に参加してもらうのがいいだろう。
勿論、現ポータルサイト事業社のノーハウを持っている人にも参加を促すべきだ。
アーチストとユーザーを繋ぐ場としての機能が、音楽配信事業には是非必要である。 ミュージック・デザイナーというポータル・エージェント(こういう表現が正しいかどうかは別にして)の存在、及びフリマ的市場管理者の存在が欠かせない。とりあえず、今の段階では私はそう思う。
アーチストへの利益配分
これも繰り返しになるかもしれないが、現音楽業界では、アーチストへの利益配分はたかがしれている。
流通業者とか原盤権や出版権を押さえた事業者が一番利益を得るのである。
アーチストは著作権者であっても大して優遇されない。(一部の例外を除いて)それでなければ、ピンクレディーの未唯(ミー)ちゃんが、過去にあんなにレコードが売れたにもかかわらず、相変わらず、二流のバラエティ番組に出演しなければならない理由が見当たらないはずだ。
中間カットは著作隣接権者のカットにつながる
音楽配信での中間業者の排除はこういった、著作隣接権の権利者の排除が課題になる。レコード店や卸業者ばかりが淘汰されるわけではないということをもう少し認識してほしいと切に思う。
セカンド・マーケットの著作権管理もまだまだこれからの課題である。
ただ、今いえることは、従来のような管理形態とは違った、よりフリーなイメージを持った構造に変わるだろうと思われる。
そこで、重視されるべきことは、著作権者のフリーな意志の尊重と作品の第三者による自由な利用である。
インターネットはフリーが基本であり、またコンテンツは第三者が自由に利用できることを目的とする。
私はそうでなければ、セカンド.マーケットは成功しないと思っている。
皆さんの意見はどうだろうか。
とりあえず、アーチストを中心にした論はこれで終り。次回は音楽配信におけるユーザー論を展開する予定。
例によって、皆さんの異論・反論・Objection!をお待ちしております。
00.11.30 Kunio Abe
今回の業界ワンポイントは軽い読み物になっているので、お口直しに転載します。
編集後記も初めてですが、こんなものを書いていたのだという記念として。 でも、ここに書いていることは、ホントにホントです。
先日も私の友人から、メルマガではあまり大したことが書かれていないが(ほっとけ!)、あの話は共感したと感情込めて言われました。
ま、こういう反応は大歓迎ではありますが。
では、お楽しみ下さい。
業界ワンポイント
〜業界こぼれ話集〜
今回は本文が重たいので軽い業界話を
◎ある業界関係者の方、有名なグループサウンズの曲の出版権を持っているという。
その人曰く「私はこれで親子が何とか食っていけるぐらいの収入があるんですよ。」
羨ましいというか、ああ、業界にはこういう人が一杯いるんだろうなと思った次第。
◎吉本のお笑いコンビ、FUJIWARAのシングルが梅田タワー限定発売で、何と同店年間売上1位になったという。
曲はまだ無名だった頃の<つんく>がプロデュースした作品。
早い話、昔の音を復刻しただけ。
ところが、大阪の梅田1箇所しか置いてないのに、5桁の売上。
FUJIWARAも東京進出目指して、先日NTVの「いろもん」に出演していた。
宣伝費を使い、プロモーターが必死になっても売れない曲もあれば、ほとんど宣伝もしてないのに、売れる曲もあるという一席。
◎PHEW PHEW L!VEという神戸在住のゴスペル風のグループがいる。(作品は全編アカペラ)ゴスペラーズとターゲットが似ていると言えばわかる人がいるかもしれない。
先日、彼らの担当者と話していたら、今年のスケジュールはほとんど満杯なんだそうだ。
カウントダウンまで毎晩仕事のスケジュール表を広げながら、「でも、これ以降って、あんまりお呼びがかからないんですよね。」等という。
正月にゴスペルも変だといえばそうだなあ。
そういえば、TUBEって、冬は何をやっているのだろう。それとハワイアンバンドの皆さんも。
◎サンデー毎日が再びバーニング告発シリーズを開始しました。許永中の名前まで出ております。最新号ではKSDまで。
裏社会の告発というのは、確かに向こう受けはするのでしょうが、いつもそれ以上のものが提示されずに、自然と終息してしまいます。
できれば、最終的にはどうしたいのか、毎回明記してほしいと思うのですが。編集後記
少し古いかもしれませんが、今年になって「フリース」という言葉を覚えました。生地に特徴があるのでしょうが、柔らかいジャンパーといってはだめなのでしょうか。
今年覚えた言葉に「ミュール」というのがあります。いつの間にか女の子たちが勝手に使い出した言葉です。西洋ツッカケだね、なんていったら思いきり馬鹿にされました。
しかし、こういう新語って、みんないきなり使い始めるのですが(しかも、知っていて当然って顔をしながら)、その構造ってどうなっているんでしょうか。
今年のはやりの色は、紫だよ、なんて誰が言い出すのでしょうか。
どこかで御託宣を聞く祭祀でも行われているんでしょうか。誰か知っていたら教えてほしいものです。
この年になってこの頃やっと、世の中が少しずつ見えて来たような気がします。
それにつれて、自分のアホさ加減もイヤと言う程自覚されてくるのですが、これはどうしようもないのですかね?
広津和郎さんが、阿川弘之さんに「あまり賢いことはいわないほうがいいよ。」と諭したことが、阿川さんの本に書いてありました。
ちょっと、胸にぐさっと来ました。気をつけよう、と思った次第です。