アーチストの生きざまが変わる
10号が出てから1ヶ月立ちました。
昔、お月さんとお日さんと雷さんが一緒に旅に出た。ある旅篭にとまり、その夜は酒盛り。雷さんは少々絡み上戸で、大体お前は暗すぎるとお月さんに文句をいい、それに比べて、お前は明るすぎるとお日さんにも無茶を言う。
まあまあと二人になだめられて就寝。
朝、目がさめると、二人はとっくの昔に出発した後。
雷さん、蒲団の上で溜息つきながら、「ああ、月日の立つのは早い。」
というわけで、10号が出てからもう1ヶ月立ってしまった。
新規業務が立て込んで、精神的に集中することができず、やっと書く余裕ができたら、お月さんもお日さんも既に立った後だったわけですね。
お待ち頂いた皆様には大変申し訳ありませんでした。でも、誰も何も言って来られなかった所をみると、待っている人はいなかったのかも。それはそれで、ちょっと空しい。
では、音楽配信を語る、今回は配信時代のアーチストの生き方についての1席。
花*花というバンドがある。浪速のkiroro等と呼ぶ人もいる。つまり、そういう二人組の女性バンドである。(どういう二人組?)
二人は人気者になった今も大阪に住んでいる。新幹線通勤だなどとテレビで言っていた。
東京に来るつもりは今はないとも言っていた。
もう一人、やはりこちらも関西方面に住んでいる倉木真衣。写真やプロモは出るが、本人は一切マスコミに登場しない。
写真誌などが隠し撮りしているらしいが、あくまで非公式な顔出しである。
ヒット構造の変化
さて、この両者から言えること、音楽がヒットするには、必ずしも東京にいる必要はないということである。
今迄の常識では、ヒットする為にはマスコミに登場する必要があった。そして、ムード的にこのアーチストはメジャーであり、そこらあたりのアーチストではないというイメージを作る必要があった。
別に東京にいなくてもかまわないが、それだと他の新人アーチストと比べて圧倒的に不利である。
マスコミは書いてはくれない。テレビにも出してくれない。こういう所にしばしば掲載されたり、画面に顔出ししないとメジャーじゃない。
従来はそう思われてきた。
一時期、ニューミュージック系はテレビに出るのを忌避していた。しかし、雑誌やラジオでは自分を出すことを積極的に行ってきた。
自分の見せ方だけの問題であり、マスコミを拒否してきたわけではないのである。
メジャーはユーザーのニーズを見失う
だが、いつの間にかこれらマスコミはユーザーのニーズとマッチングしなくなってきている。
むしろ、DJ系のクラブだったり、地方のラジオ局だったり、インディーズだったりと従来のマイナーがユーザーのニーズにマッチングしはじめているといえる。
よく聞く話だが、あるインディーズのバンドが、手作りのCDを3万枚売った実績があるのに、メジャーデビューしたとたんに3千枚しか売れなくなったという。
つまり、今のメジャーシーンはユーザーとマッチングしていないのだ。詳しい分析はここではしないが、従来のヒットのメカニズムが構造的に変わろうとしていることのひとつであろう。
アーチストは東京にいる必要はない
さて、音楽配信である。
アーチストは東京にいる必要はない。又、音楽配信事業社はそれぐらい自分達を差別化するべきだ。
従来のヒット構造から育ってきたアーチストを真正面から取り込もうとするべきではない。
そんなのは今の旧態依然たる音楽業界に任せておけばよい。彼らが自分達の音楽配信というメディアを使って売るだろう。ただし、従来の構造を温存しながら。
しかし、従来の構造を温存した中では音楽配信は単なる添え物にならざるをえない。
それはインターネットユーザーのニーズと完全に矛盾する。
音楽のユーザーがインターネットユーザーに移行している過渡期であると認識するなら、いつまでも著作権(原盤権)問題ばかりを強調して音楽配信マーケットに水をかけつづけるべきではない。
今迄の音楽ビジネスモデルはもう古いのだ。それぐらいわかっているはずだ。
ナップスターが有力な宣伝媒体に
そういえば、ナップスターがBMGと和解したというニュースが流れた。無料ではなく、定額制でダウンロードできるシステムを作るそうだ。
これは私の持論と合致する。音楽配信は会員制とし、定額制にして何回でもダウンロードさせてあげないと、インターネットユーザーは納得しないよ、というのがその趣旨である。
大手レコード会社の残り4社はまだ対応策を決めていないらしい。
裁判が決着してからでも遅くないということかもしれない。
しかし、その間何千万人というユーザーを持つナップスターをプロモーションツールに獲得したBMGが、業界で圧倒的優位に立つだろうということは誰にも予測可能と言わざるを得ない。
レコード会社には困った話である。
今迄は営業妨害といっていた相手が一夜にして最大の味方になるのである。
そういえば、悪徳業者と呼ばれ、放送局から毛嫌いされていた大阪有線が、いつの間にか有線ブロード・ネットワークス等と名称変更し、郵政省の認可まで得られる時代になった。
法律なんかくそくらえ、客と繋いだ方が勝ちじゃと言っていたという先代の社長。
それが違法行為であれ、結局実行した方が勝ちなのである。
インターネットの時代、これはとても示唆的であると私は思う。
では、アーチストの皆さんよ、これから君たちはどうするべきなのか、いよいよそれを書こうと思うが、今回はとりあえず、ここまでとさせていただく。(出し惜しみしているわけではありません、ちょっと時間がなくてこれ以上は書けないのです。)
00.11.3 Kunio Abe