今日は軽い思い出話を交えての更新。
私が10代の頃、朝日ソノラマというソノシート付きの月刊誌があった。
今で言うとCDR付きの雑誌のようなもの。
あまり裕福でない我が家では、残念ながら毎号買うということは許されなかったが、たまに手に入れたものが今も実家に残っている。
人工衛星第一号「スプートニク1号」の通信音とかケネディ大統領の演説とかが入っていた。
テレシコワ女性飛行士の「私はカモメ(ヤーチャイカ)」の通信もあったような。
つまりは、その月の印象的な音を毎号特集していたと言うわけだ。
今では、この月刊誌持っていたら、良い値段で売れるはず。
ただし、ソノシートがついていないと絶対にダメだけど。
ひょっこりひょうたん島に使われた曲を特集した月もあった。
これは、子供心にも是非買いたいと思ったものなのだけど、結局お金がなくて買えなかった記憶がある。
これだって、今じゃ一万円ぐらいの価値はあるだろう。
ソノシートというのは、いわゆるサファイア針全盛の頃の所産だろう。
ダイヤ針だと、簡単に穴が空きそうだが。
レコードが買えないので仕方なくソノシートを買うという人も多かった。
朝日ソノラマは、ちゃんとメジャーなアーチストの曲も売っていた。
レコードの廉価版という印象かな。
朝日ソノラマは、ラジオ番組の提供もやっていた。
進行は佐々木信也さん、後にプロ野球ニュースのキャスターを務められた元プロ野球選手。
どういうつきあいで佐々木さんが喋られたのかは知らない。
音楽番組で、使う曲はすべて朝日ソノラマから発売されている曲。
当時のP盤アワーとかS盤アワーとかのソノシート版というところか。
ただし、そんなに音源がないのか、かかる曲がいつも同じ。
冬になると、毎回「百舌が枯れ木で」がかかる。
有名な人が歌っていたのだろうが、歌手名は忘れた。
私が好きだったのは、マーチ特集。
ブラスバンド部だったということもあるが、どのマーチングバンドがやってもあまり変わらないから、音源的に貧粗でも苦にならないからだ。
思うに、朝日ソノラマというのは、最初は小学生や中学生の学習雑誌的なものをめざしたのだが、段々娯楽化し、漫画やテレビの特集みたいなものに変わって行ったのではと思う。
いつのまにか消えてしまったのは、レコードのオルタナティブとしてのソノシートの役割がなくなったからだろう。
経済成長と所得倍増のおかげとでもいうのかな。
ソノラマというのは、ソノシートを使ったパノラマ雑誌という意味合いだと思う。
当時パノラマという言葉は、子供の夢をかきたてる魅力的な言葉だったのだ。
シネラマというのもあった。
シネマとパノラマスコープの合成語で、これも凄いのひとことだった。
いつのまにか、シネラマ専用映画館もなくなってしまったなあ。
ソノシートというのは、フランスで開発されたと朝日ソノラマのサイトに書いてあった。
ソノは音だし、シートは薄い板のことだけど、どう見てもフランス語には思えないが。
調べてみると、朝日ソノラマの造語だとか。登録商標らしい。
朝日ソノラマ以外は使えなかった言葉だ。
そういえば、フォノシートという言い方も当時したなあ。
ソノシートが使えなかったからなのだ。
にしても、ソノシートが登録商標だったとは。
よく、少年雑誌には、ソノシートの広告が載っていた。
私も何回か購入した。
一枚シングルを買う値段で4枚ぐらい買えたからだ。
ビートルズの曲と書いてあるから、買ってみたら、歌っているのは日本人。
ケン浅沼とか書いてあったかな。
そんなの手に入れるまではわからんがな。
こんなのは、ダマしである。
でも、渋々、そのソノシートを何回も聞いたけど。(それだけ音楽に飢えていたわけね。何しろテープレコーダーがない時代だから)
通信販売のソノシートはそれでも、映画のサントラ風なのはなかなかよかった。(本当のサントラではない。)
映画の中の一場面を効果的に使っていたからだ。
どうやって、あんな音を入れることができたのかは今も謎だが。
10年ぐらい前に、「FMノスタルジア?朝日ソノラマの世界」という番組企画を考え、朝日ソノラマ社に当時の音源を貸してほしいと申し入れた時、その頃のものは処分済みで何も残っていないと言われたのがショックだった。
朝日ソノラマにとっては、ソノシートはとんだ厄病神だったらしい。
わからないものだ。
しかし、「百舌が枯れ木で」を毎週毎週かけるディレクターの真意がプロになってからでもよくわからない、スポンサーの要望だとしても、そんなのかけて何が良い事あったのだろう、安部邦雄