瀋陽(シェンヤン)での日本領事館事件、全くどうしようもないな、日本という国は、というのが正直な感想である。
北朝鮮、中国、そして日本という、ややこしい国家関係がからむので確かにこういう事態を処理するのは難しい問題である。
では、どうしたらよかったのか?等と考えても容易に答えは出ないだろう。
できることは、そのプロセスを明らかにして何が間違っていたのかの検証とか、今後どうするべきか等の再発防止策ということになるだろう。
本当に国は、外務省は何をしているんだという国民の不満が徐々に高まっていくことは確実だろうが。
でもね、この国は、どこまで行ってもこんな国じゃないだろうか。
この国を素晴らしいと思う気持ちって、皆さんはどれだけ持っているのだろうか。
この国は、政治は三流だし、経済ももはや三流、文化も停滞気味だし、外への発信機能も年々衰えて行くばかりだ。
だけど、日本という国はそんなに嫌いじゃない。
何故なら、住めば都だし、ここ以外に私がのんびりできる場所を知らないから。
日本には、悪いところも恥さらしなところもたくさんある。
でも、この土地が私の土地であり、貴方の土地である。
北海道から沖縄まで、ずっと私達の土地だ。
この土地は、私と貴方のために作られた土地なのだから。
「わが祖国」の剽窃だけど。
で、こういう事件が起こるたびに私が思うことは、日本にはシステムがないということだ。
システムがないから、どうしたらいいのかわからない。
教育されもしないし、しつけもない。
頭の中では、みんなわかっているのだが、運動系までには脳の信号は伝わらない。
日本人って、一度コンセンサスがとれたり、決定したことがオーソライズされれば、実にそのルールをよく守る。
逆にいうと、頭の中だけで作ったルールで、守れるかどうかわからなそうなのは、何かと逃げ道をこしらえておいて、後で守らなかったことを正当化させようとすることも多い。
つまり、形式的には決まったことを守っているようにするのである。
日本のルールなどの決定パターンはたいていこれである。
だから、一見守れそうになかったり、そのまま決まってしまえば、あとで色々矛盾が出て来て、混乱しそうなことでも、とりあえずルール化してしまえばいい、という面が強い。
逃げ道を用意してあります、矛盾が露骨に出て来たら、その時は又ルールを修正すればよいのです、とか言いながら、とりあえずルールを作ってしまうのである。
これは政治の話だけではない。
日本の至る所にこの決定システムがはびこっている。
早い話、これが日本の文化なのである。
さて、日本の領事館の話に戻る。
副領事の行動が問題だと言われているが、あれこそ典型的な日本人の行動ではないか。
日本人には、例えルールがあろうと、臨機応変に対応しないといけないと言う気持ちがある。
しかも、なるべく他者と軋轢を起こさないで対応するのが正しいとされている。
あの時、副領事が中国の警察官と戦っても、亡命者を取り戻すなんてことを期待する方がどうかしている。
日本ではそんな教育はなされていない。
有事法制が不備だとか、日本人は危機意識が足りないと言う人がいるが、日本のどこにそんなシステムがあるというのか。
具体的なシステムがわからなければ、そのシステムが必要かどうかもわからない。
子供達にそのシステムを守る意識を教えることもできない。
日本の国家意識を教えるために、国旗掲揚、君が代斉唱しか考えつかない国である。
そのうち皇居遥拝とか、御真影への最敬礼なんてことも復活しかねない。
違うのである。
大事なのはシステムなのだ。
そのシステムを具体的な形で表し、それを国民全体が理解し、それを子供達に教えて行く。
その具体的な構造なのである。
阪神大震災で、国は結局人々を見殺しにしたし、家や財産が灰になっていくのをただ傍観するしかなかったではないか。
沖縄では、国は人々を本土への楯として利用し、その命を全く守ろうとしなかったではないか。
日本人に足りないとするならば、それは自分達を守るためのシステムである。
マスコミ規制三法も有事法制も、人々を積極的に救うためのものではない。
単なるお題目、看板にすぎない。
必要なものは具体的なシステムである。
人々の心の中の、いざと言う時に自分達を守り、人々を救おうとする正義を育む、全体とした社会システムである。
オウムがサリンを蒔いた時、私達が一番信頼したのは、警察であり、自衛隊ではない。
あれが、ゲリラ活動なら、私達は警察を圧倒的に信頼する。
少々の侵略なら、警察で何とかしろ、と私なら思う。
自衛隊が本当に私達を守ってくれるのか、そんな信頼感はいまだに日本の中には定着していない。
いわんや、大使館、領事館をや。
具体的なシステムが必要と言いながら、じゃ、お前の考えている具体的なシステムを具体的に述べてみろと言われたら、にわかに答えられないのがちょっと辛い、安部邦雄