今さらIT革命?と思われるかもしれない。
今、革命の真最中だと思っている人が多いからだろう。
だが、私は懐疑的だ。
本当にIT革命が起きているなら、企業の形態がほとんど変化していないのは何故だという疑問がわく。
IT革命の本質は、情報取引コストの劇的な低減につきる。
その萌芽は感じないでもないが、劇的な流動化はまだ起きてはいない。
私のイメージするIT革命の具体化は、労働者(サラリーマン)が都会に集中していることとは矛盾する。
つまり、勤務形態は、都会の事務所に大量に集まることではない。
もっと分散化して存在したほうが費用の低減化がはかれるはずだ。
まず、大都市周辺に住まなくても同じ情報を得ることができるのなら、働く場はローカルでも十分のはず。
人が集まることが大事なのなら、定期的に一ケ所に集まればいい。
常に大都市の周辺にいて、通勤地獄の中、高い物価に悩まされる必要はなくなる。
会社としてもどれだけ効率的なことか。
だが、そんな動きはまだ見えない。
本当のIT革命はまだ始まってはいないというのは、そういう理由からだ。
東京のビルの建設ラッシュを見ながら、私はこれで本当にIT革命を起こすつもりがあるのかと思う。
大会社なんか、もっと分散化させないと、ITの理想形態にならないはずなのに、今や増々集中の一途。
効率化のために集中させているという感じだ。
少なくとも、これはIT革命とは逆行している、違うだろうか。
元々、企業の経営者はIT革命なぞ望んでいなかったのかもしれない。
今も、社内の連絡はメール中心なんて会社、ほとんどない。
そういう環境を率先して作ったのに、メールを拒否する社員も一杯いる。
これは私もわかるような気がする。
よく、社長と平社員が直通になってしまい、中間管理職の価値がなくなるといわれるが、問題はそれだけではない。
平社員にしてみても、毎日の報告を義務付けられる、それがITだ。
今日一日、どこでどんな作業をして、その成果はこれだけ、という風に、簡単に業務内容が集中的に把握される。
何もしなかったら、途端に叱責が来る。
それがIT社会の一面でもある。
いわゆるコンピューターによって日常監視される、オーウェルが書いた「1984」の世界でもあるのだ。
革命によって、実権を握るのは誰か?
誰もそのことには触れていない。
しかし、革命は実権収奪の戦いである。
誰が誰から権利を奪うのか。
今はまだ牧歌的。
本当の革命の本質が現れるのはこれからだということだ。
IT革命の本質は分散化と集中だと私は思う、分散化=身体知、集中=脳知とするならば、革命の本質は人間の中で起きていることの具現化にほかならない?安部邦雄