藤井耕一郎「通信崩壊」(草思社)を読んだ。
今通信業界で起きていることは、今の日本の産業をだめにすると書いてある。
通信インフラは公共財であり、安易に自由競争にさらせてはいけないのだそうだ。
もし、今のような規制緩和を続ければ、NTTが破綻し、携帯電話も破綻するだろう。
電話というのは、常に繋がっているからいいのであって、IP電話のような信頼性のないインフラに変われば、繋がらなくなったら誰が責任をとるのか。
安定した情報インフラであるNTTを崩壊させれば、結局困るのは消費者だ。
今のような規制緩和は、通信業界を崩壊させ、一部の連中の利益に利用されるだけなのだ。
以上が「通信崩壊」の概略だ。
わかりやすく言うと、「ヤフーBB」はけしからんみたいな話だ。
自由化して得するのは、「ヤフーBB」とその取り巻き連中だ。
「ヤフーBB」ほど問題を起こしている企業はいない。
繋がらなくとも責任はとらないし、自分達の利益ばかり考えている。
あんな会社のやりたい放題にさせていいのか、てな話なのだ。
まあ、「ヤフーBB」がけしからんというのは、わからないでもない。
ただでモデムを配っている姿を見ると、アメリカのマーケティングをそのまま持込んだだけのような気がして、あまり肯定する気にはなれない。
しかも、アフターサービスは最低だという評判。
顧客サービス体制がほとんどできていないのに、客ばかり引き込んでいる。
まるで安物の居酒屋だ。
それよりはNTTの方が信頼できる。
ま、それはその通りなのだが。
インターネットなどを活用したばかりにアメリカの通信業界もガタガタではないかと筆者は言う。
通信業界では値下げ合戦はしてはいけない。
電話をタダにしてはいけない。
今の日本のIT戦略会議は間違っている。
この本を読みながら、私は違和感を感じてしかたがなかった。
ITは技術なのであり、それをどう使うかはユーザーが決めればよいことだ。
で、それを各個人が使う為に、既に各家庭に引き込まれている電話線を使うのは別に問題はないはずだ。
使えるものは使えばよい。
電気の配線が使えるならそれでもいいし、ガス管が使えるのならそれでいい。
それでなくても、各家庭には色んなラインが外から引き込まれている。
インターネットをするのに、態々新規に引くなんてことは無駄のひとことだ。
インターネットは情報コストをゼロにする可能性がある。
今まで別にサービスを買っていたのを、すべてインターネットですませることができるようになる。
その場合の支出はゼロだ。
設備に対する費用は発生するにしても、情報をやりとりする費用はほとんど発生しない。
それをゼロにしてはいけない、と筆者は言うのだろうか。
インフラを維持する費用は、情報コストがゼロでも関係なく発生する。
それゆえ、通信業界はその範囲で収入が得られるはずで、衰退するわけではない。
何か、いきなりブロードバンド化すれば、その日からすべてがタダになるみたいな話だ。
そんなことはあり得ない。
インフラを維持する費用は発生するし、その費用を払わないなどと消費者は思っていない。
「ヤフーBB」がインフラを恒常的に維持出来ないなら、誰もそんなところとは契約しない。
通信業界に新しく参入する業者が、すべて「ヤフーBB」みたいなところばかりだなどとは思わない方がいい。
恒常的にサービスを提供できる業者だっていくらでも出てくるだろう。
NTTでなければできない、なんて何故思うのか。
構造改革は、今まで無駄なところに使われていた費用を、今後拡大再生産が見込まれるところに回す為の構造づくりが目的なのだ。
NTTに投じる費用の投資効率が悪ければ、衰退していくのは消費者にとってはウェルカムではないか。
通信だけは別とか、電力業界は別とか、水道は別、ガスは別、米は別、タバコは別、酒は別とか、今までの既得権業者を守る為の理屈は、もうやめてほしい。
こんな本がベストセラーで、大評判だなどと言われると情けなくなる。
壊れるものは壊さないといけない。
観光や学術に役立つならまだしも、今までの利益構造を壊すと混乱が起きるから、なんて理由で現状のまま維持するとか、補強工事をするなんて話はやめよう。
手始めに、小泉首相に早く自民党をぶっ潰してもらいたい。
何か、明日の日本はそこから始まるような気がしてならないのだ。
世の中は流動化しはじめているのに、それに気づかないか、無視している権威者がまだまだ多い、このままじゃ日本はまっこと、だめになるぜよ、安部邦雄