私の実家は、千林というところにある。
スーパーダイエーの発祥地として、知る人ぞ知る街だ。
千林には千林商店街という、大規模な商店街がある。
大阪にいた頃は、買物はほとんどここで済ませることができた。
衣料、食料、日用品、それにレコードもだ。
前に、金持ちのボンボンをたき付けてレコードを次々に買わせたと書いたが、それもこの商店街のレコード屋がメインだった。
一時期は、レコード屋は商店街に3軒もあった。
一つは、昔ながらのレコード屋で、レコード小売業組合の役員もしていたところだ。
演歌が中心で、若者はほとんど行かなかった。
私も一回も買ったことがない。
もちろん、今は廃業。
日用品を細々と扱う店になっている。
二軒目は、私が一番よく行った店。
京阪沿線に次々と店鋪を拡大して行くぐらい、時流に乗ったショップだったが、バブルがはじけてから夜逃げ同然で街を去った。
店鋪拡大のリスクは大きかったということなのだろう。
三軒目は、ニチイ(マイカルサティ)の中にテナントとして入っていた。
売場は広かったが、わざわざ買うほどの品揃えでもなかった。
中途半端に全ジャンル置くなら、専門化して品揃えを豊富にした方が私は使ったのに。
で、これもマイカルがアボーンして、影も形もなくなった。
そうです、今や千林商店街には、レコード屋が一軒もなくなったのです。
そりゃ、CDが売れなくなるのは当たり前ですね。
で、よく考えると、レコード屋が辿った道と、映画館が辿った道が似ているような気がしませんか?
映画館も千林には5軒あり、どこも老若男女で賑わっていた。
今は一軒もない。
映画を見ようと思えば、都心迄出かけて行かないといけない。
気楽に映画でも見ようかという気持ちが、どうしてもわかなくなった。
レコードもそうではないだろうか。
家で、ぼーとしていて、何か音楽でも聞こかと思って、近くのレコード屋に行く。
なじめの店員に、何か面白いの、ないの??と聞くと、こんなんどや?、と言って、試聴させてくれる。
あ?ええなあ?、ほなこれもらうわ?。
毎度おおきに、ほな、サービススタンプ押しときます?10集めたらお好きなアルバムあげまっせ?。
ありがと?、ほな、又来るわ?。
あ?りがとさ?ん。
日常からレコードを買うというライフスタイルが消えたということなのかもしれない。
レコードを買うことが「ケ」ではなく「ハレ」になってしまった。
結局、音楽のビジネスモデルが変更を余儀無くされていることなのだろう。
レコード店が一軒もなくなってしまった千林商店街。
音楽文化が育つ芽が又ひとつ消えてしまったというわけか。
などと言ってみたが、一つだけ忘れていた、駅前にTSUTAYAができていたんだった、とはいえこちらはレンタル文化、新しいビジネスモデルといえないこともないですね、安部邦雄