昨日、病気になればすべてを失うと書いた。
もちろん、健康体に戻れば幾分は戻って来るものもあるだろうが、一度失ったら二度と戻って来ないものも多い。
私で言えば、何本かの歯。
色んな理由で抜かなければならなくなったとはいえ、二度と戻って来ないのが残念である。
細かいことを言えば一杯ある。
青春は二度と戻って来ない。
黒々とした髪もそうだし、つやつやした肌もそうだ。
たいていのことは、数分で記憶できたフレッシュな脳も、今やぎゅうぎゅう努力して詰め込んでも、すぐにどこからかこぼれ落ちるようになった。
あんなに時間を割いて、記憶した膨大な知識は、今や言語の欠片となって意味を失っている。
過ぎ去りし、我が膨大な時間も同じ。
「モモ」でエンデは時間泥棒の話をしていたが、盗まれたというよりも、どんどん失われているのだという厭世感の方が自分にはフィットしたりする。
本当は、昨日書いた「失われたカバン」は、こういった私の珠玉のような時間を納めていたのかもしれない。
ああ、私のカバンよ、お前はどこへいってしまうのか?
金もなくなったし、力もなくなったし、地位も、夢も、栄光も。
何か、病気になると本当に気弱になるもんだなあ。
今から、取り戻せるものは取り戻してやる。
そう思って、この一年、走り抜けてやるぞ!
風邪なんかに、負けられっか、なあ!
夕方ぐらいから体調が少し戻り気味、明日からは病気の話はしばらくしないことにする、安部邦雄