強面、こわもてと読む。
恐ろしいというか、迫力のある顔をして、相手を圧倒させる人のことを言う。
先日、そんな人と話をした。
その人は、仁義を外さないつきあいさえしていれば、別に怖がる必要もない人なのだが、ちょっとでも筋違いのことをするとさすがに黙ってはいない。
どういうことや!なんて強く言われると、慣れている私でも怖い。
ほとんどの人はびびってしまって、声も出ないかもしれない。
でも、そんな強面の彼にも悩みがあった。
彼だって、仕事があるのだ。
打合せもしないといけないし、人に頼みごとをする時もある。
営業に近いこともしないといけないし、どうせお金を出してもらうなら、納得して出してほしいと思うのである。
だが、相手はその風貌を見ると、恐喝されているような気分になるようだ。
話の中味も聞かないで、お金はこれだけしか出せませんみたいな話になる。
強請に来たわけではない、真っ当な商売をしたいのだと彼は思う。
だが、普通の人とは、なかなかそういう関係にならない。
そりゃ、おれだって普通の商売をしたい。
だが、相手がそういう気持ちになってくれないと、どうにもならないのだ。
あんたはいいよな、どう見てもいい人だし、笑い顔だって様になっている。
オレなんか笑って話しているのに、相手は、お愛想笑いしかしない。
仕事って、人との繋がりだから、そこまで行くには人の倍は労力がいる。
そういう気持ちって、あんた、わからんだろう。
人には、色んな悩みがあるのだ。
アウトローだけで、人は生きては行けない。
そりゃ、金を巻き上げるのには強面だと話は早いが、相手に喜んでもらおうと思っても、心から満足してもらうことは難しいということなのだろう。
人は、悪だけで生きるのは辛いのである。
オレは何もこんな顔に生まれたかったわけじゃないなんだ。
そう禿鷹は言った。
なるほどねえ、と私は笑った。
見るからに気が弱そうで、イジメにあいそうな人もいる、それよりはマシと言えるかもしれないけど、何か理不尽なことだなあと思ったりしました、安部邦雄