先日、ある人と久しぶりに会い、酒を酌み交わした。
話は専ら、彼の仕事のこと。
3月に人事異動があり、どうも望まない部署に配置変えされそうだという。
今さら、新しい仕事にチャレンジという気持ちにはなれない、今迄やってきたことで勝負したいという話になった。
何しろ、もう40歳をすぎている。
現場が好きだし、クリエイティブな連中とのつきあいを優先したいらしい。
で、このまま人事が発令されたら、会社を辞めるつもりなんだとか。
まあまあの大企業に勤めている彼。
そこにいれば、人並み以上の収入も保証されているというのに、やりたいことがやれないのなら辞めるしかないと決めているようだ。
不満を持ち続けながら、いやいや新しい職場にいるのなら、確かにきっぱりと辞めてしまった方が後悔しないかもしれない。
しかし、どうなのだろう。
収入を失ってもいい、俺はやりたいことをやりたいんだでいいのだろうか。
仕事の中味を選ぶか、収入を選ぶか。
私なんか、前の会社を辞めて10年になる。
辞めて得したのか損したのかよくわからない。
後悔するのはイヤだから、それを深く考えることはないが、こうして会社を辞めるという人に会うと、ちょっと複雑な気分だ。
辞めたら損だよ、と本当は言いたくなるのだが、イヤな職場に毎日通うのも辛いだろうなと思う。
すまじきものは宮仕えとも言う。
利をとるか、夢をとるか、いずれにせよ、人生の価値がそれで極端に変わるとは今は思えない私である。
私自身、会社を辞めたのは良かったかどうか、そう思わないとやってられないのは事実だが、本当はどうなのだろうか、しなくてもいい苦労を背負い込む愚を何故冒したのかと問われても返す言葉もない、安部邦雄