遅ればせながら、なかにし礼さんの「てるてる坊主の照子さん」を読んだ。
先週終了した連続テレビ小説「てるてる家族」の原作である。
読んでみて、ちょっと驚いた。
テレビとは力点がずいぶん違っていたのだ。
主人公である冬子は、原作ではほとんど活躍しない。
一番最後に、アメリカングラフィティ風にこう書いてあるだけだ。
冬子は宝塚音楽学校卒業後、歌手デビューし、一年後に作詞家と結婚して引退した。
それだけである。
パン屋を継いだなんて話、どこにもない。
というか、パン屋は東京の山崎パンの安値攻勢にあって、どこも閉業していった、シャトーも例外ではない、みたいなことも書いてあった。
NHKは、とにかく企業名を出せないという変な不文律がある。
山崎パンとか、それに近い話なんかきっと表現できなかったのだろう。
大資本に、町工場が蹂躙されていくなんて話も、不用意には描けなかったに違いない。
何しろ、これはホームドラマなのだ。
あまりシリアスなストーリーは、朝にはふさわしくないという判断があったと思う。
ついでに言うと、前に私が書いたように、原作にはいしだあゆみが場末のキャバレーで歌う場面なんかどこにもなかった。
何しろ、歌手としては売れていなくても、いしだあゆみはテレビの人気タレントだった。
あんな売れない演歌歌手みたいな扱いを受けるはずがないではないか。
しかし、テレビの脚本家というのは、実に見事にストーリーを継ぎ足すものだと感心する。
小米朝さんと森口博子の感動的な求愛の場面なんて、どうやって考えたんだ。
ちょっと感動してしまった私だったが、原作にはカケラもない。
何か、バカにされたような気分だ。
しかし、大阪を舞台にしたドラマって、どうして東京人に下手な大阪弁を喋らせるのだろう。
今回は、岸谷五朗とか上原多香子とかの大阪弁は、素直にドラマを見たい私を何ども邪魔した。
最近は大阪人でも、ベタな大阪弁を喋らない連中もいるし、京都風、神戸風の関西弁を喋る連中もいるわけだから、無理して大阪弁を喋らせなくても良いのではと思うのだが。
早い話、大阪弁を変な東京アクセントでしゃべる奴は大阪ドラマには出すな、ということだ。
こういうのって、本当に白けてしまうのだ。
それだけで、ドラマの展開は面白くても、何度も見たいとは思わなくなる。
アーカイブなんかしてほしいとは全く思わない。
久しぶりに、集中して見た朝ドラ。
それだけに、不満がどうしても残ってしまったのが残念だったですね。
でも終わり方は、あんなミュージカルのアンコールみたいにしないで、アメリカングラフィティみたいな、この子は今誰某と結婚して子供が2人いる、などというエンディングにしてほしかったな、安部邦雄