50歳を過ぎれば、もう老人だと思っていた。
人間50年?、信長が本能寺で舞う姿を見て、私もその年になれば後は死出の旅路を準備するものと漠然と感じていた。
浪花千栄子さんという名女優がおられた。
「お父さんはお人好し」で、花菱アチャコさんと夫婦役を演じておられた。
年は50歳を過ぎたという。
お婆さんの役といってもよかった。
だから、50を過ぎればもう老境なのだと信じていたのだ。
そして、私はもう54歳。
来年になれば、四捨五入すれば60である。
こんなのでいいのだろうかと思うほど、自分の中で進歩がない。
未だに20歳前後の若造のように自分を見てしまう。
自分を律することもできなければ、状況の判断もまともにできない。
向こう先も見えずに、無闇やたらに突進し、馬鹿にされて帰ってくる日々。
こんな50代で、本当によかったのか。
老いの花を咲かすには、どうしたらよいのか。
情けない、根無し草のオッサンである。
論語読みの論語知らず、ふとそんな言葉を思い出した、真理の言葉を知っていても、実践に使えなければ知らないのと同じ、自戒しないといけない、安部邦雄