私の友人にとんでもない鼾をかく男がいる。
音量はもちろん大きい。が、それは我慢しよう。問題なのはその不規則性。
吸って吐いてを規則的にくり返すなら、何とか処理のしかたもありそうなのだが、下手をすると1分間ぐらい呼吸停止状態だったりする。
無呼吸症などと呼ばれるらしい。
実は私も酒を飲んで寝るとそうなるらしい。昼間、眠くて仕方がないと思ったら、無呼吸症を疑えと言われている。
ちょっと困ったもんだ。
ところで先日、その友人と同室となった人の話。
「彼が鼾が凄いのはよく知っています。そこで、私はいつも睡眠誘導剤ハルシオンを持っているので、彼が眠る前にさっさとこれを飲んで寝てしまうことにしています。睡眠剤と違うので副作用もなく、朝はすっきりですよ。」
ハルシオンねえ。アメリカでは簡単に手に入るという。自殺には使えないとも言っていた。
安全な睡眠薬なんだろう。
ところで、私は睡眠誘導剤として、よく落語のカセットを聞く。
基本は上方落語なのだが、東京に来てからは江戸落語も聞くようになった。
落語を睡眠剤にしている人って意外に多いらしい。
私の友人にも二人ほどいるし、何と糸井重里さんも志ん朝師匠の落語を聞きながら寝るのを習慣にしていると「ほぼ日」に書いていた。
他にも、毎晩浪曲を聞きながら寝ているという知人もいる。
広沢虎造の孫にあたる人で、ファッションは極めて現代的でかっこいいのだが、趣味が浪曲と言われると、ちょっとガクンと来る。
でも、浪曲で寝るのも楽しいだろうな。一度、虎造全集のCDを図書館で借りてきて試してみようかな。
でも、落語とか浪曲を聞きながらどうして眠れるのかとピンと来ない人もいるかもしれない。
寝物語で「昔々あるところにおじいさんとおばあさんが・・・」などと親に聞かせてもらった経験のある人ならよくわかるはず。
つまり、安心して眠ってしまうのです。自然とお話が夢のように私を誘ってくれるというわけですね。
お酒を飲まないと眠れないというのは最悪だそうです。癖になるそうですから、くれぐれも御注意を。
無呼吸付きの鼾はやめたい安部邦雄