昔のテレビ番組の題名である。
関西電力提供で朝日放送(ABC)が放送していた。
出演は泉田行夫さん。
元NHKのアナウンサーで後に大阪芸大教授にもなられた人。何を隠そう私も泉田先生からアナウンスメントを教えられたひとりだ。
芥川の「蜘蛛の糸」とか伊丹十三の「女たちよ」などを教材にして、朗読を習ったりしたわけだが、その暖かい声質は余人に代えがたいものがあった。
95年に亡くなられた。今も時々思い出すたびに、若き自分の身の程知らずな野望が記憶として蘇ってくる。
申し訳ないですね、こんな私になってしまって。
話を元へ戻す。
「電気のABC」は電気の啓蒙番組という位置付けであったと思う。
電気はどういう風に作られるのか、こういう使い方は危険、新しい電気器具のお知らせ等々。
その中で、泉田行夫さんはこうおっしゃっていた。
「電気はまだまだふんだんにあります。どんどん皆さんも使って下さいね。」
水力と火力発電の割合が半々の頃だだったと思う。
もちろん、原子力などというものは実用化されていない。
一杯あるからどんどん使え、これを浪費などと思わないでもらいたい。
「御飯はいくらでもあるから、どんどんお代わりしてね。」という母の言葉でもあるのだ。
やっと御飯が各家庭に供給できるようになった。だから、もう遠慮しなくてもいいんだよ、そういうメッセージなのだ。
電気もそう。
簡単に停電していた時代だ。まだヒューズを交換していた時代でもあるし、天井の電球に三つ又ソケットを差し込んで、たこ足配線で電気を使っていた頃の話だ。
今では泉田先生の「電気は余っているからどんどん使え」というメッセージはとんでもない戯れ言になるだろう。
原子力発電に依拠する我々の文明生活は正しいのかと論議される時代となった。
パラダイムが変わってしまったのだ。そして、又次のパラダイムが始るのかもしれない。
昨日のサントリーの天気予報で思い出した番組だ。
ついでにNHKの番組「ケペル先生の、何でも考え、かんでも知って、何でもかんでもやってみよう」でおなじみの(?)「ものしり博士」も思い出したのだが、その話はまたいつかすることにしたい。
雷の光を見ながらふと書きはじめた、今日のペンギン・ノートでした。
懐古趣味とは呼ばないで、安部邦雄