窓からの景色をボーと見ていると、ふと口をついて出る言葉。
遠くへ行きたい。
そういう気持ちをもっと言葉にしようと思えば、この歌を思い出せばよい。
ジェリー藤尾の1962年のヒット曲「遠くへ行きたい」。永六輔作詞/中村八大作曲。
「知らない海をながめていたい、どこか遠くへ行きたい」
この曲をテーマにして国鉄や日本交通公社などが始めた番組が今も日本テレビの朝に放送されている「遠くへ行きたい」だ。
スタートは1970年の10月、デュークエイセスがテーマ曲を歌っていた。
当時は電通しかけのキャンペーン「ディスカバー・ジャパン」が大はやりのころ。
70年安保に破れた団塊の世代の挫折感を、旅という非日常に引きずり込むことによって癒し、リフレッシュさせたものだ。
その時のお題目が「ディスカバー・ジャパン」、そして「遠くへ行きたい」だったといえる。
良く似た言葉に「遠くまで行くんだ」というのがある。
小野田襄二氏編集の同人誌のタイトルだったと思う。
大学のバリケードの中に、ひとこと「遠くまで行くんだ」とマジックで書かれていた。
造反有理、帝大解体と言う空疎なスローガンより、それは学生たちの心にしみ込んだ。
「遠くまで行くんだ」、ここには断固たる不退転の意志がある。
たとえ、途中で挫折しようとも、心のどこかではいつもこの叫びがある。
いつか、きっと、遠くまで行くんだ!
臨時革命政府など結局子供たちの夢物語にすぎなかったが、それでも今もどこかでこの言葉をくりかえしていることだろう。
たとえ、この身が朽ち果てようと、魂魄この世に留まって、いつか、いつかきっと、遠くまで行くんだ・・・。
「知らない人とめぐりあいたい どこか遠くへ行きたい」
窓の外は新宿の夜景。
林立する高層ビル群。
その向こうに、ずっと向こうに
あるものは幸いか?
山のあなたになお遠く 幸い住むと人のいう。
山のあな、あな、あな、あな・・・・。
頭脳が暑さでショート気味、安部邦雄