夏休みに入って、家の前の中学校からトロンボーンの音が聞こえてくる。
ブラスバンドの練習のようだ。ふだんは教室の中でやっているのを、休みで誰もいないからか、校庭まで出て来て吹いているようだ。
ジャズっぽいアレンジで、2、3本のトロンボーンがハモっている。
なかなかうまいなあ。
実を言うと、私も中学時代はブラスバンド部だった。楽器と言うのは子供の頃から好きだった。
たて笛なんか、苦もなく吹けた。(そりゃ誰でも吹けるよ。)
兄の運動会で、行進するブラバンがとてもカッコよく見え、中学に入ったら直ぐに入部した。
1年の時は、クラリネット。最初は第三クラリネットだった、秋には第一クラリネットになっていた。
先輩が第二クラリネットを吹いていた時に、生意気な私は第一である。
実力があるのだから当たり前だと思っていたが、大体こんな経験するから、後で色んな問題を起こすんだと、今では恥ずかしい限りである。
二年生になるとテナーサックスが卒業したので、自然とサックス奏者に。
クラリネットの音量に不満を持っていたのでサックスへの転向はウェルカムだったが、本当はクラリネットを続けていた方が私には幸せだったろうと思う。
それぐらいうまかったのだ、私は。残念だ。移り気なこの身がうらめしい。
さて、昔話は横に置いて、表題のアルトとバリトン。
普通は声の高さの分け方だが、ブラバン的に言うと、どちらも楽器、金管楽器の一種だ。
チューバという楽器を御存じだろうか?別名バスともいうが、角を丸くした長方形のでかい楽器である。
それを少し小ぶりにするとバリトン。もうひとつ小ぶりにするとアルトになる。テノールとかソプラノという楽器はない。
私は、ブラバン時代、この2つの楽器が無茶苦茶ダサく思えて仕方がなかった。
アルトは音域的にはホルンと同じである。
ただ、ホルンは持ちながら吹くのはとても不便。それで持ちやすいアルトが考えつかれたのだろう。
ホルンといっても、この場合のホルンは丸い形をしたフレンチホルンのこと。
イングリッシュホルンは、むしろクラリネットの仲間。
ホルンというのは角笛という意味で他にも色々種類がある。
アルペンホルンとかマッターホルンとか。
はい、ここで突っ込み!
夏休みというと、昼間はたいてい学校で練習していたのを思い出す。
イヤな先輩のしょうむないシゴキ。かっこいい先輩の繊細なトランペットの響き。
うまくなりたい、と死ぬほど思いましたね。
ああ、クラリネット続けておけばよかった。かえすがえすも口惜しい。
ま、窓の外から聞こえるトロンボーンの音色に、コンブレを思い出したプルースト安部でした。
でも二十歳過ぎればただの人、安部邦雄