墓参りの季節である。
奈良の平群というところに私達一族の墓がある。
昔は、とんでもない田舎。
単線で一両の電車(信貴電と呼んでいた)に乗ってゴトゴトと山の中を行く。
清澄な龍田川(今は赤土で汚れた川)にそって南へ南へ下り元山上口で下りる。
今は駅員もいるが、前は駅らしきものもなかったところだ。
そこから少しのぼったところに、山ふところに抱かれるように墓所はある。
子供心に遠いところだなと思った次第。
それから四半世紀。
今では、このあたりは関西のベッドタウン。
山はどんどん削られ、バイバスが縦横無尽に走っている。
次々と建て売り住宅が立ち、中途半端な街が広がりはじめている。
墓所の横には、悪名高き「かんぽの宿」が立っている。
とはいえ、私達にはとても便利な施設だ。
住職の読経を聞き、一族の墓参を一通り終えた後、たいてい宿の大浴場で汗を流す。
ひのきの大きな湯舟。寝そべるように入り、ひのきの枕に頭を乗せると、木々をかすかに揺する風の声が聞こえてくる。
気持ちいいー!
風呂上がりで大広間に集まり、ビールでのどをうるおす。
うまい!
久しぶりに見る親戚の人々。兄弟の家族。
至福のひととき、悪名高くとも「かんぽの宿」樣々だ。
近くには、長屋王の墓もあり、私の趣味の古墳めぐりも簡単にできる。
平群氏関連の豪族の墓なのであろう。
千早ぶる 神代もきかず 龍田川 からくれないに 水くくるとは
在原業平の歌ですね。
昔はもっと見事な眺めだったのでしょうね。
この歌は、もちろん相撲取りの龍田川が千早花魁に振られたことを歌っているわけではございません。
もちろん、千早は井戸に身投げして水をくぐったわけではありません。
でも、そう考えた方が面白いですね。
小さん師匠の「千早ぶる」はとてもイイ出来です。寝苦しい夏は、これを聞きながら寝ると、意外とぐっすり寝られるんですよね。
ええと、墓参りの話で、何をいうつもりだったのか忘れてしまったなあ。ま、私の墓はそういう典雅(?)な場所にあるということですわ。
でも今年は行けず、御先祖様すみません、安部邦雄