みおつくしの鐘といっても、関西人以外の人はあまり知らないでしょうねえ。
「澪つくし」というNHKの朝ドラがあったので、みおつくし自体は御存じでしょう。
沢口靖子、明石家さんまの出演で、1985年の作品です。
ただし、舞台は大阪ではなく、銚子でしたが。
「みお」というのは水路のこと、「つくし」は「の串」という風に理解できます。
舟等の航路を示す串のことなんですね。
大阪市の市章になっているので見たことがある方も多いでしょう。2008年のオリンピック誘致で大恥かいた時にもこのマークがアップになっておりました。
百人一首にとりあげられている歌にも使われています。
わびぬれば今はた同じ難波なる
みをつくしても逢はむとぞ思ふ
元良 親王 後撰集
身を尽くす、という意味をかけているわけですが、今だとこれぐらいのかけ言葉はオヤジギャグ扱いかも。
また、ゆうてるで、あのオヤジ。あほちゃう。
元良親王の時代はよかったということでしょうか。
さて「みおつくしの鐘」ですが、実際どんな鐘でしょう。
大阪市役所の上にあって、成人式の日に新成人がつく鐘です。
毎年NHKのローカルニュースに成人の日になると出ていました。
別に普通の鐘で、みおつくしの形をしているわけではありません。(第一、みおつくしの形では鐘にはなりませんが。)
前の市庁舎にはてっぺんに鐘楼のようなものがあり、そこに鐘が何となく見えていたような記憶があるのですが、今は新庁舎になってしまったので、見えるというようなことはないでしょうね。
というか、今も現物があるのかどうかも知りませんが。
勤めていた放送局が中之島にあったので、夜遅く帰宅しようと思うと、たいてい市役所の方角からこの「みおつくしの鐘」が聞こえて来ました。
毎晩10時になると鳴らすのです。といっても、録音した音をスピーカーを使って聞かせているので、毎回実際に叩いて鳴らしていたわけではないでしょうが。
「ミドレソ、ソシレド」という音階で始まります。
ああ、10時やなあ、はよ帰ろ、と思ったものです。
今でも10時になったら同じように鳴っているのでしょうか。庁舎の前は御堂筋ですが、この時間になると意外とまわりはひっそりとしているものなのですよ。
ラジオでも昔はこの鐘の時報を鳴らしていました。
「みおつくしの鐘が10時をお知らせします。ポーン!」
時報の前まで、みおつくしの鐘の音階が流れていました。だから、関西人はたいていこの「みおつくしの鐘」の音を知っているのです。(今の子も知っているのかな?)
東京では、そういえばこの類いのものって何もないですね。
東京の文化には歴史の深さが反映されされたものって少な過ぎますね。
結局、みんな地方から出て来て、腰かけ程度に東京に住んでいるからなんでしょうか。
いわゆる浅草等の下町や鎌倉等の古い町には、歴史を感じる文化みたいなものがあるのですが、会社のある新宿とか渋谷には、ただテンポラリーなブームが時間のストリームに乗って流れていっているだけような気がして仕方がないですね。
ほとんどの高層ビルは、何十年後には東京の卒塔婆になると予言する人もいます。
かって、ここに人が群れし街ありきの墓標とともに。
私もそんな予感がしているのですが、家来どもはどう思っているのでしょう?
まず、そこで惰眠をむさぼっているnomura君はどうかな?
こら、起きんかい1
窓越しに新宿の光を浴びながら、安部邦雄