美空ひばりの昭和31年のヒット曲「波止場だよ、おとっつぁん」。
でも、この曲をラジオから聞こうと思ってもほとんど絶対と言っていいくらい、不可能です。
スターデジオ(スカパーのラジオチャンネル)なら、どさくさまぎれにかけているかもしれませんが、基本的には放送はできない曲になっています。
昔は放送できました。
だから、私は歌詞を覚えているし、ヒット曲のリストにも入っているのです。
そうです、理由は歌詞にあるのです。
古い錨が捨てられて、ほーら、雨に泣いてる波止場だよ。
年はとってもめくらでも 昔ならしたマドロスさんにゃ
海は、海は、海は恋しいよ、ねーえ、おとっつぁん
すみません、無許可で歌詞を書いてしまいました。
詩は西沢 爽さんです。すばらしいフレーズです。年老いたマドロスの悲しさが雨に煙る波止場を通して胸に響いてくるではないですか。
でも、この歌、だめなのです。
めくら、この言葉が入っているからこの曲は葬られざるをえないのです。
この部分を他の言葉に置き換えて歌ったことがあると言う話も聞いた気がするのですが、イマイチしっくりしないということで、美空さんもほとんど歌われなかったとか。
そりゃ、そうかもしれないですね。
山口百恵さんの「プレイバック・パート2」もNHKから「真っ赤なポルシェ」を「真っ赤な車」に言い換えろ!なんて指令が来ていたと言う話もありました。
こんなの、作詞家からするなら理不尽もいいところです。
私なら、即刻拒否ですね。それやったら放送してもらわんでもええわ!言うて席立って帰ってしまうでしょうねえ。
ま、私がこんな騒動に巻き込まれる可能性なんかほとんどありませんが。
「波止場だよ、おとっつぁん」は「哀愁波止場」に続く波止場シリーズ第二弾だったと思います。
「哀愁波止場」は美空ひばりさんの特集ではよくかかっているので、返す返すも残念。
曲は数段「波止場だよ、おとっつぁん」の方がよくできているのに。
後輩の島倉千代子さんもこの曲の大ファンだったらしく、私もこんな歌が歌いたいと言って、作ってもらった曲が「東京だよ、おっかさん」だったそうです。
嘘ちゃいますよ。ネタちゃいますよ。今作ったんとちゃいますよ。
めくらってそんなに悪い言葉ですか?
どめくら!なんていうのは、私も良くない言葉で葬り去るべきかな、とも思いますが、めくら蛇に怖じずとか、めくら判とか、言葉としてはそんなに響きも悪くないし、ことさら差別意識も伝わって来ないと思うのですが。
でも、それを決めるのは私ではないので、やはり、嫌がる人がいる限り、遠慮した方がいいのかもしれません。
で、何故、禿げとか豚とかブスとかは言ってもいいのでしょうか。何だかなあですね。
でも差別する心は醜いので気をつけたい、安部邦雄