子供の頃から星を見るのが好きでした。
今よりはもう少し都会の空は澄んでいて、4等星ぐらいまでは見えていました。
詳しくない方のために言いますと、肉眼で見える範囲の星は6等星以上と規定されています。
ついでにいいますと、一番明るい恒星は冬の星座「おおいぬ座」のシリウスです。
二番目は「りゅうこつ座」のカノープス。こちらは日本では南の方へ行かないと見えません。
三番目は、ええと、ケンタウルス座アルファかな、これも日本では見えにくい。
四番目は、ええと、確か、こと座のヴェガだったかな、織姫星ですね。
五番目は、、、あのね、これじゃまるで森の石松の三十石舟で、キリがない。
ま、とりあえず寿司食いねえ。
先ほど一番明るい恒星と言ったけど、惑星などの星も含めると、一番明るいのは、御存じ金星。
宵の明星なんか西の夕焼け空にピカー!と光ってますよね。
十字架のように見える星はおそらくこれだけでしょう。
次が木星でその次が土星かな。時期によっては火星かもしれないなあ。
木星はこの前、木星食がありました。
地味な食で、わざわざマスコミが大々的に報じるようなものではありませんが、何故かどの新聞にもデカデカと掲載されておりました。
どこの新聞社にも天文オタクがいるということの証しなんでしょうなあ。
獅子座流星群とかペルセウス座流星群のような華やかさは少しもないのにね。
ちなみに木星食は東京では曇っていて見れませんでした。
ま、元々東京の空では、月と木星の輪郭を峻別するのは難しいと思いますが。
でも、この年になっても星を眺めていると一晩でも見飽きないですね。
オーストラリアのエアーズロック周辺で見る星空は完璧だと言う人もいます。
といってもこちらは南半球なので、ふだん見かけない星ばかりなので、あまりなじみのない空になってしまいますが。
でも、天の川と南十字星のコントラストはそりゃあ見事でしょうなあ。(行きてえー!)
北半球の空だと、やはりハワイのマウナケア山(すばる天文台のあるところ)がいいかもしれません。
でも、途中が真っ暗なので、行くのは怖そうですね。
今までで一番感動したのは、高知県は甲ノ浦の浜辺で見た空ですね。
もう、30年近い前です。
甲ノ浦は今や関西のサーファーが集まる絶好のポイントになってしまい、だいぶ賑やかなようですが、当時はのどかな浜辺でした。
喫茶店一つなく、コーヒーを飲みたい私は、よろず屋さんに行って、インスタントコーヒーとクリープを買い、わびしく一人飲んだものでありました。
友人の生家があった関係で、夏の間だけアルバイトで塾の先生をしに行っていたのです。
素朴な生徒たちに英語と数学を教えておりました。
ただ、田舎なので、羽目を外すようなことは一切できず、仕方がないので、夜は海岸で星ばかり見つめていたと言うわけです。
そりゃ、誰だって夏目漱石の「坊ちゃん」のように黒板に昨日どこそこで何をしていた、なんて書かれたくないですからね。
私は本当に星を見るのが好きでした。
中学3年までは、大学で宇宙物理学を専攻しようと本当に思っていたのですから。
でも、高校1年でその夢は捨てました。
1年で習った地学が全然面白くなかったからです。こんな学問、俺には向いていない。
で、何故か理数系から文科系へ。
そして中途半端に齢を重ね、今に至る。
近頃、目も段々老眼になってきて、夜の視力は衰える一方。
ああ、人の命の悲しさよ。sigh.
ビリー・ヴォーン「星を求めて」を聞きながら、安部邦雄