今日は9月9日、重陽の節句である。
菊を酒に浮かべて飲んだり、菊を入れた枕で寝るなど、菊の花を使った風習があるという。正直、初耳だった。知らないこともまだまだあるものだ。
大阪の実家に帰り、近くの銭湯へ行くと、今日は「菊風呂」だという。
組合の申し合わせで、重陽の節句にあわせて菊風呂を実施することにしたそうだ。
同じようなものに5月5日の菖蒲湯、冬至の日の柚子湯などがある。
近頃は菖蒲湯は湯が汚れるのであまりやらないという話も聞いた。
こういうのはゲンのものだから、衛生的かどうかを問うのは野暮というものである。
それなら、残念だけどやめた方が賢明かもしれない。
で、菊風呂の話。
いつもより、湯が緑色がかっていて、一瞬全部薬湯にしてしまったのかと錯覚したぐらいだった。
湯船の端に布袋が浮いていて、中に菊の花がぎっしり詰め込まれていた。
それが、湯を緑にしたのだろうか、ま、こういうのも悪くない。
しかい、果たしてこれで新たな客が呼べるのだろうかと心配になる。
銭湯は今や斜陽産業のひとつである。
新規に始める人などよほどの物好きでない限りいるはずがない。(スーパー銭湯は別だが。)
問題は色々ある。
未だに入浴料金は知事が決めている。
勝手に風呂屋が値段を決めてはいけないのだ。独自のサービスも基本的に許されていない。つまり、新しいことを個々の風呂屋がやろうとしても、組合がそれを結果的に邪魔してしまう業種なのである。
こんな業種はほかにもある。
私の実家の商売、質屋もそうだったし、床屋や美容院などもそんなところがまだ残っているのではないだろうか。
そういえば水道工事屋にもそういうところがあるようだし、町の工務店等にも同じようなものが何かありそうだ。
とにかく、個々の経営者が自由に新規の企画ができないような業種は廃れていくのはしかたがないのかもしれない。
前にも書いたが実家には風呂がない。
できれば銭湯は潰れて欲しくないと思うのだが、今経営されている方がやる気をなくされれば、それで終わりだろう。
何しろ、どう見ても客は少ないし、儲かっていそうにない。
菊風呂も、確かにやらないよりはましだろうが、そんな企画をやっていることなど、大多数の人は知らない。
風呂屋の表にポスター貼るぐらいで、新たな客など来るはずはない。いつもの客は菊風呂であろうと、何にも入ってない風呂だろうと、関係無しに入りにくるわけだから、もっと新規の客を呼び込むような仕掛けがいるのではないだろうか。
とにかく、風呂屋さんには頑張ってもらいたい。
でないと、実家に戻ったら私は風呂に入れなくなるのだから。
アーええ湯やったなあ、湯上りのビールに酔いしれる安部邦雄