サイトの管理人が、里帰りしてしまった。
いきなり、ちょっと帰って来ますと言って夜行で戻っていったのだ。
この時間、たいてい私の後ろで無精髭はやして寝っ転がっていたのに、そのむさ苦しいのがいないとなると、これはこれで物足らないものがある。
猫みたいな奴だから、ふらっと出ていってそのままなんてこともあるかもしれないなあ。
ま、あいつは猫よりも熊っぽいと言った方がお似合いだが。
早く帰っといでね、ダーティ・ベアー君。
で、この管理人、4月に会社に加わって以来、ちゃんと家があるにもかかわらず、ほとんど事務所にいるようになった。
四六時中パソコンの画面を見て、じっとしている。
事務所はフレッツISDNによるインターネット常時接続に近いので、彼には理想的な環境なのかもしれない。
確かに事務所にずっといても、彼の魂はインターネットを通じて世界各国を旅行しているのかもしれない。
そりゃ家に帰らないはずだ。
会社でワークしているのではなく、単にトリップしているだけと考えれば、楽しくて仕方がないのかもしれない。
髪はぼうぼう、ヒゲはそらない、汚い手ぬぐいを首にまいている、こんなサラリーマンは普通存在できないだろうなあ。
ま、旅行者に何を言っても無駄。
里帰りというのも、そのバリエーションにすぎないのかもしれないね。
でも、これからはこういう種類の人間が当たり前になってくるかもしれない。
働く場所には、インターネット常時接続環境があればそれでいい。
24時間、そこにおれと言われれば幾らでも居る。
出勤も退社もない。
ちょっとした気分転換の時間があればそれでいい。
ついでに言うと、フロムスリーの社員(つまり私の家来)でマトモに電車に乗って通勤しているのは私一人だ。
ひとりは歩いて通えるところに住んでいる。
ひとりは事務所の中に住んでいる。
ひとりは滅多に事務所に出て来ない。
昔では考えられないような状況だ。
今では携帯電話もあればインターネットもある。
結局、皆どこにいても一緒に仕事はできるのである。
前にも書いたが事務所の中はほとんど音がしない。
全員、モニターに向かって、マウスのクリック音とキーパンチの音を響かせているだけ。
誰が何をしているのか、ほとんど興味が行かないようだ。
従来の会社だと、色々と手取り足とり新入社員を教育しないといけなかったが、これからは「はい、これが君のブース。後はコンピュータに聞いて。」で済むようになるかもしれない。
質問があれば、メールで聞けばいい。
知らぬ間にSF的な環境が可能になってきつつある。
そうか、今までのSF小説や映画で足りなかったのはインターネットだったんだ。
結局、意外なものが次の時代のトリガーとなるというわけか。
インターネット常時接続なんて、うちの会社はセキュリティの問題があるので認めないというところもまだまだ多い。
気持ちはわかるが、時代に取り残されるだけではなかろうか。
老兵は死なず、ただ消え行くのみ、そんな会社がこれから増えていくことだろう。
貴方の会社はいかがかな?
うーん、やはり家来が後ろにいないと内容が散漫になるなあ、安部邦雄