幕張の放送機器展Inter BEE 2001に行ってきた。
何これ?と思ったのが、表題のASSET MANAGEMENTという言葉。
普通に訳すと「資産管理」だが、これは金融業界で使われる言葉だ。
御丁寧にSOLUTIONなんて言葉もついて、「ASSET MANAGEMENT SOLUTION」の御提案なんて書いてある。
話を聞いて大体分かった。
放送局が持っているコンテンツ全体に対する管理システムのようである。
コンテンツの作り方、利用の仕方、アーカイブして販売する等の全体のソリューションのようなのである。
こんなコンセプト、誰が考えたんだろう?
放送局にASSET MANAGEMENTなんて考えた方あったっけ?
日本語で資産管理なんて言うと、放送マンの99%は誤解するはず。
放送局にとって、制作した番組が資産であったなんて誰が思っていただろう。
放送マンが命令されていたことは、次のような管理方針である。
「番組は放送し終わったら、許可がない限り3ヶ月以内に消去せよ。」(以上は私が上司に言われたこと。普遍的なものかどうかは知らない。)
再放送が1回だけなら新たな承諾を得る必要はない、という話もあった。
番組が資産なら、こんなルールが存在するはずがない。
単なる消費材、それが番組なのである。
文化的な価値を重視する意味から、局内で保存するのは差しつかえない。但し、その旨報告する義務がある。(これは文化庁へ届けるのかな?)
アーカイブしたものを販売する為には、別途処理が必要となる。
そんな処理をするのは邪魔臭いから、よほど売れる見込みが立たない限り商品にしたりしない。
私の記憶では、こういう邪魔臭いことをやりはじめたのはNHKサービスセンターだと思う。(今はNHKアーカイブとか、子会社が一杯で、どこがやっているか特定できないが)
私も一度、フロムスリーの製作物(ミュージカル)関連でNHKサービスセンターと交渉したことがある。
その舞台映像をNHKが保管していたからである。
置いといても仕方がないので、少しでもお金になるならビデオ化でもしましょうかね、なんて呑気なことを言っておられた。
結局、著作権者とか実演家とか色々な権利を処理する費用等の実費ほど売り上げが見込めなかったので、私達はビデオ化を断念した。
権利処理費用、これは意外と馬鹿にならないのである。
しかも、誰か一人でもビデオ化を拒否したら、今迄の作業がすべてパー。
道路を通そうとして、最後の一人の地権者の強固な拒否にあって立ち往生するようなものである。
反対農家の立ち退き拒否で成田空港の滑走路ができないのと同じ。
国とか役所は、ほったらかしておいても痛痒は感じないだろうが、民間ではこんな目にあったら大変だ。
話が長くなったが、つまりそういう理由で民間放送局はアーカイブして売り出すなんて普通考えなかったのである。(そんなことしなくても、充分儲かっていたという理由もある。)
「男女七人」あたりから、日本のドラマもどんどんビデオ化されるようになったと記憶している。
これは、最初からビデオ化を前提にしているので、権利をクリアしてから放送を始めている。
後からだと、簡単にはクリアできないことがわかっているからである。
さて、こういった放送局の苦労も知らないで、放送機器メーカーは何の衒いもなく「ASSET MANAGEMENT」なんて言葉を持ち出してくる。
「コンテンツを持っておられる放送局の皆様に、その為のASSET MANAGEMENT SOLUTIONを提起させていただきます。」
放送局はコンテンツなんて持ってないよー。
ASSET MANAGEMENTなんて知らないよー。
でも、私はちょっとこのコンセプト気に入った。
そんな考え方、今迄したことがなかったので、しばらく検討してみようと思う。
何か新しい概念にたどり着けそうな予感がするのだ。
ということで、その報告は又私のインターネット私見ででも発表することにしたい。いつのことかは約束できないが。
インターネット私見、次回発行は11/18です。安部邦雄