構造改革によって、最も不利益を得るのは既得権者である。
既得権とあまり縁がない層というと、まず若者。
これから既得権に挑戦しようと身構えている。
世襲的に親の地位が約束されているボンボンは別。
本当はこういう連中も改革しないといけないのだが。
次に縁がないのが、低所得者層。
失うものはそれほどない。
後は、一般的にいう女性。
既得権をお持ちの女性は半分はいまい。
既得権と関係ありそうなのは、だから次のような層だということがわかる。
アダルト層の男。中流階級から上。
構造改革の対象はそれゆえ、こういった連中ということになる。
だったら、私も入るのか?
え?今のお前は低所得者層や?
うーん、そやったなあ。
私の出自である放送局なんて、既得権の固まりである。
まず、国民の共有財産である電波を独占している。
しかも、その電波に勝手に付加価値をつけ、転売(リテール)している。
電波をもっと多くの人に分配しようとすると、それでは企業の運営ができない、我が社を潰す気かと陳情に走る。
この考えにも一理がある。
構造改革によって、潰す対象は、経営が行き詰まり、将来性もあまりないと予測できる企業のはずである。
曲がりなりにも、利益を上げている会社(放送局)を、それは既得権益だから手放しなさいでは経済ががたがたになる。
だから、この場合可能な限り、新規参入を規制して現行の放送局の経営に影響を与えないようにしないといけなくなる。
極めてアンビバレンツな状況である。
規制緩和が企業の競争を活発化させるのはわかっているのに、その競争によって、今の優良会社がどんどん経営悪化のスパイラルに陥って行く。
短期的には、財政的に大変困った状況になる。
レコード業界もそうだろう。
CDの流通が、インターネットによって脅かされた場合、まず中間業者が次々と経営破綻する。
実際には、もう卸業者はほとんど赤字経営である。
レコード店なども、一部を除いて自転車操業状態だ。
店鋪はまだ現金決済なので、何とかやっていける。
卸がやばいのは、決済がほとんど掛け売りだったりするからだろう。
この構造は書籍も同じ。
アマゾン・ドットコムの効果は今年よりも来年にもっと顕著に現われてくる。
既得権の怖さは、知らぬ間にその権利を犯されてしまうことだ。
それを守ろうというのは、城ひとつを守ることに等しい。
城の守り方なんて、ほとんどの企業は知らない。
攻めることは、知らぬ間に身についているのだが、守るのはとても苦手な人が多い。(将棋などでも普通そうですね。)
既得権者はそれゆえ、一番恐れなければならないのは、知らぬ間に既得権を奪われることだ。
それゆえ、過剰防衛してしまう。
インターネットをめぐる著作権の問題なんか特にそうだ。
過剰防衛は世論の支持を絶対に受けられない。
インターネットを使う人が増えれば、防衛線は次々と突破されるだろう。
今は、インターネットの利用者がまだ少ないのだ。
だから、ネットからの圧力に耐えられているにすぎない。
昨日も言ったが、ユーザーが津波のようにネットを使うようになったら、既得権擁護だけの戦略では到底防ぎきれないということを知るべきだ。
既得権を破壊しようとしているのは、技術革新そのものである。
イノベーションに対抗できる何か、それを貴方はお持ちだろうか。
昔は私も既得権者の一人だったんだけどなあ、安部邦雄