関空=関西国際空港が開港したのが1994年。
私は1989年に大阪を離れたので、当時の事情はあまり詳しくない。
大阪で、ディレクターの仕事に励んでいた頃は、関空の開港は本当に楽しみだった。
これで、アジアへのハブ空港ができる。
そうしたら、大阪がアジアの窓口となるだろう。
アジアの情報がアジアの人々を通じてどんどん大阪に流れ込んでくる。
大阪は、そういった情報の発信地になるかもしれない。
すべては夢想だったとしか思えない。
バブルがはじけたから?
違う違う、空港を作ってから何の努力もしなかったからだ。
私のアイデンティティは今も関西にある。
それは間違いない。
しかし、関空に関しての感想は明らかに失望である。
二期工事なんて、実需要が全く見えないのに、何故作る必要があるのか。
おそらく国の予算が欲しいだけだろう。
それで、大阪の土木・建設業界がうるおい、少しでも雇用を安定化させたいだけだろう。
そんな発想は、田舎に高速道路を引いてほしいというのとまるで変わらない。
同情はする。
二期工事を請け負うことが決まってほっとした業界の人には、今さら工事中止なんてとんでもないことだろう。
これは私も零細企業の経営者だから凄くよくわかる。
しかし、二期工事は止めた方がいい。
同じように神戸沖の空港建設なんて、絶対に止めた方がいい。
インフラができてもコンテンツがなければ、ニーズは産まれない。
コンテンツ=飛行機が飛んでくるはずがないのだ。
それでなくても、成田の暫定滑走路ができただけで、航空会社が次々にシフトしはじめている。
関空にも確かにユーザーはいる。
しかし、安物のユーザーしかいない、と各社は結論づけている。
成田は利益率のいいビジネス・ユーザーが多い。
関空はエコノミーばかり。
ならば、同じ数の客を運ぶのなら成田がいいに決まっている。
とにかく、今までの行政はユーザーの動向を全く計算に入れていない。
インフラができれば、勝手にユーザーは発生すると思い込んでいる。
ユーザーは、そのニーズにあったサービスを作り出すから生まれるのである。
空港があるからニーズができるのではない。
ニーズがあるから、空港が必要なのである。
神戸空港なんか、誰が必要だといっているのだ。
関空はもっと特色を打ち出すやり方があったはずだ。
着陸料が高ければ下げればいいのだ。
それでなければアジアのハブ空港なんかなれない。
ユーザーを価格競争の中からつかみながら、そのユーザーのニーズをさらに高度化させ、より利益率の向上をはかっていけばよかったのだ。
何で着陸料を馬鹿高くするのだ。
本四架橋とか東京湾アクアラインと全く同じ構造ではないか。
借金を返す為には、交通量はこれだけ、高速料金はこれだけ。
料金が高いのは、当面しかたがない。
高くても、こんなに便利なのだ。
みんな使わないとおかしい。
関空は、おそらくますますユーザーが減って行くだろう。
当たり前だ。
飛行機の離着陸回数が減るに決まっているからだ。
景気が回復したら、もっと利用客が増えるはず。
だから、その為に二期工事を。
その為に神戸新空港を。
アホか、バカか。
ユーザーを創出する方法論を何も提示出来ないで、作ったら、客が来るなんて何を根拠にそう思うのだ。
前にも言ったが、パラダイムの変換に頭が対応できていない連中が社会の上層部に多すぎるのだ。
未だに政官財の癒着構造で、日本の経済を支えようなんて連中がはびこる間は、日本なんてアメリカに勝てっこないではないか。
ああ、哀れなるかな、わが大阪。
落日にそまる、はるかなる関空。
♪滲む街の灯を、ふたり見ていた?桟橋にとめた、車にもたれて?
関空の海は、悲しい色やねん?
大阪はUSJをもっと活用した方がいい、確実にUSJは客を大阪に呼ぶだろう、力を入れるところを間違えるな、と思う、安部邦雄