聞きかじりのマーケティング論
今回は配信事業のマーケティングについて一応私が理解できたことを書くことにした。
私はメールマガジンでマーケティングを学習
私が音楽配信事業を考えるにあたって何よりもまず始めないといけないなと思ったのは、マーケティングの学習だった。
どこかにいい本でもないかと探していた頃、たまたま出会ったのが、森行生さんというコンサルタントの方が発行されているメールマガジン『「私はこう見る」コンサルタント生の本音情報 』だった。
その説明に「このメールマガジンは、マーケティング・コンサルタントである私が、日ごろ何を見て、何を考えているのか、を綴るものです。」とある。
申込んで読んでみるとこれがとても面白い。
こういうのを無料で提供されているのだから立派なものだと感心した。
何故、アサヒビールはキリンに勝てたのか。サブウェイは何故禁煙をやめたのか。iMacは何故売れたのか等々。
何でも理論はあるもんだなあ、というのが正直な感想。
ほとんどの人が仕事をする時に参考にするのは、先輩から受け継いだ知識とか技術、それに自分の経験則。
あまりマーケティング理論を勉強している人など、私の周囲にはいなかった。
そこで目からウロコが落ちたのが、このメールマガジンだ。
一度、お読みになることをお勧めしたい。以下のアドレスでどうぞ。
http://www.systrat.co.jp/myview/myview.html音源配信事業の成否はシステム次第
さて、その中でも私が感心したのが次の図式である。
『トライヤーの獲得 → リピーター確保 → リピーターのロイヤルユーザー化』
ITの基本はこれだと私は思った。
一般的にIT革命の本質は「多数と多数の双方向技術」だという。手紙や電話などは個と個の双方向伝達技術、放送は個から多数への一方通行である。
多数と多数の双方向技術の中での、ビジネスモデルが上記の図式である。
目的はリピーターのロイヤルユーザー化である。しかし、それを獲得する為に、前段階が必要だと言うことだ。
トライヤーの獲得、つまり、一度は試しにユーザーに来てもらわないといけない。
そして、気に入ってもらえれば客はリピーターとなる。いわゆる顧客化である。
しかし、今迄はこれで終りだった。ITの世界ではロイヤルユーザーとのone to oneの関係を作ることが重要だ。
これはインターネットのユーザーになってみればわかる。選択肢があまりに多ければ困るのである。
とにかく自分が安心できるサイトがあれば、余り他のところへ行かなくなるだろう。
音楽配信も同じである。
インターネットは便利であり、音楽や映像はとりわけ親和性があると前に書いた。
しかし、便利であるということはシステムまで規定する訳ではない。
ITはシステム勝負
どういうシステムにするのかは、配信業者次第である。
多数と多数がコミュニケートする為のシステムはまだ確立している訳ではない。
このシステムを最適化した業者だけが市場を形成することができると私は思う。
昔の「市」を思い出していただきたい。
生産者は魅力的な市場に生産物を持って行きたい。その場合、運ぶ道が整備されてなければ持って行く気がしないのは自明であろう。
いくら便利な市場を作っても生産者はやって来ない。
消費者は市場が魅力的でなければ行く気はしない。他になければ仕方無しにその市場に行くかもしれないが、インターネットの世界では無数にできてくるわけだから、従来のような商売の仕方は通用しない。
モータリゼーションによって、郊外大型店の発展が商店街を駆逐するようなものである。
音楽配信の現状
上の比喩を配信の世界に当てはめてみよう。
生産者、すなわちアーチストは市場を魅力的であると思うか。
配信の市場に生産物(作品)を出す方法論は最適化されているか。(不便ではないだろうか。)
消費者は市場に魅力的な作品を見つけることができるか。(市場が魅力的であるか。)
市場は作品を獲得するのに便利な場となっているか。
通信インフラ=道とするなら、日本はまだまだであることは前回に書いた。それゆえ音楽配信は当分限定的であることはしかたがない。
では、配信市場に生産者や消費者が少しでも覗きにいってみようというインセンティブが何かあるだろうか。
今の段階でいえるのは、コンテンツ的にはどこも大変みすぼらしい。レコード店にいけばたいていのものが品ぞろえされている。
配信市場など、フリマ(フリーマーケット)のようなものであると考えた方が理解が早いだろう。
ならば私達は大変魅力的なフリマを作るにはどうしたらいいかを考えるべきであろう。
ミュージック・デザイナー、その姿が少しは見えてきていないだろうか。
さて、マーケティングの話ということだったが、大した話にはならなかった。
次回以降にもう少し中味のある話をしてみたい。
00.7.14 Kunio Abe
(付録)
メールマガジンに第2号から手軽な読み物として付録としてつけたもの。今回のは面白いと思うのでアーカイブに収録した。
業界ワンポイント
小柳ゆき、売れるポイント
今、人気の女性アーチストというと、低年齢層には倉木真衣、もう少し上が宇多田ヒカルで少し健康的な層には鈴木あみ、同じ層かもう少し高い層でコギャル系が浜崎あゆみ、そして過激なコギャル系が今回の小柳ゆきである。もう少し上だと椎名林檎がいるし、年齢層にはほとんど関係ないのがモーニング娘。だろうか。
で、今後どうなるかというと、おそらく、ランクが下がるであろうというのが、宇多田と鈴木あみだろう。その場所には、今年から来年にかけて新人アーチストが出てくると私は予測する。
しかも、全然違うジャンルから。
小柳ゆきは、では何故売れたのだろうか。
要素は3つ程ある。1つは事務所が「バーニング」であったこと。
ブッキング能力が群を抜いているし、レコード会社へのプレッシャーも強い。(デビュー曲のリリースにテレビCMの宣伝費を相当使えるのは政治力の為せる技。)
2つめは小柳ゆきの並外れた歌唱力。コギャル系でここまでストイックに声を出せる素材はいない。(コギャル系でなければ幾らでもいるが。)
3つめはデビュー曲「あなたのキスを数えましょう」の質の高さ。いわゆるストーリー性を感じさせる曲で、SMAPの「夜空の向う」とか「ライオン・ハート」などもこの範疇だろう。
欠点は、容貌である。
レコード会社の担当が「ちょっとテレビには出せないんだよな」等と言っていたような記憶があるようなないような。
しかし、ここで神風が吹いたのだ。
いわゆる「ヤマンバ」ブームである。
あの化粧をしたら、美醜の価値観が混乱するのである。その混乱をついて、遂に彼女はテレビに出たのだ。
「美人は3日で飽きる。ブスは3日で慣れる」というではないか。
これで暫く彼女は安泰である。
でも、同じような顔をした小柳ゆきフォロワーは絶対売れない。
これだけは強調しておくに越したことはない。