月末の月曜日。
銀行のATMはどこも人の行列ができていた。
2時すぎに行列に並んだが、10分しても全然進まない。
馬鹿らしくなって、もう少し大きい支店にまで行った。
こちらもいつもより人の列は長かったが、それでも20分ほどで自分の順番が回って来た。
最初に行った支店は、きっと1時間かかっても順番は回って来なかったのではなかろうか。
順番を待つのは別にかまわない。
本でも読みながら、ぼーと待っていればいいのだから。
嫌なのは、時々並んでいる客がいらついて、声を荒げたりすることだ。
いったい、いつまで待たせるんだ。
俺は3時までに振り込みしないといけないのだ!
気持ちはわかるが、大声をあげるのはやめてほしい。
周りにいる人たちのほとんどが同じ気持ちでいるが、じっと我慢しているのだから。
しかし、銀行も銀行だと思う。
客を並ばせることだけが能ではなかろう。
客にオルタナティブを用意すれば、こんなあからさまな不満は減るはずなのに。
ネットバンキングにもっと本腰を入れて客を誘導すべきではなかろうか。
各支店の設備と人間が相当節約されるはずなのに、何故かいつまでも同じ状態が続いている。
ネットバンキングにどれぐらい顧客が流れているかを銀行は発表しないところをみると、ほとんど利用は進んでいないのだろう。
実は、私も一応はネットバンキングに登録している。
しかし、一度も使ったことはない。
何故なら、使う場面がないからだ。
個人としては、それほど振込の機会はないし、残高の確認もしない。
自分の預金の残高ぐらい知っている。
現金が欲しい時は、最近はコンビニ半分、銀行半分というところか。
それよりも、銀行の列のほとんどは事業者関係であると私は思っている。
私が並ぶのも、会社関係の振込が多い。
もちろん、法人のネットバンキングも銀行は最近用意するようになった。
しかし、個人が無料なのにもかかわらず、そこそこの使用料をとるのだ。
これは、わからないでもない。
インターネットではなく、電話回線を使った振込や残高確認は、ずっと前から行われていたからだ。
私の会社も、この回線を引いていたため、毎月そこそこの設備料とか手数料を取られていた。
それと同じ費用を請求してくるのも、結局、前のシステムが存続しているからだろう。
インターネットであろうと、専用回線であろうと、手間は同じ。
だから、同じだけの金をとる。
銀行は、きっとこういう風に自己を合理化していることだろう。
ならば、何故に個人は無料なのか。
今は、暫定的に無料にしている。
そのうち、普及すれば金をとるつもりなのかもしれない。
そう、顧客がネットバンキングに移行すれば、銀行のATMは今よりぐっと数を減らすことができる。
そうすると、客はますますネットバンキングに頼らざるを得なくなるから、その時には手数料をどーんと徴収すればいい。
銀行の考えそうなことだ。
だから、法人から手数料をとるシステムが、最終的なネットバンキングの形なのだろう。
だから、すでにとっている法人の分は、インターネットになっても無料にしない。
以上は単なる憶測だが、ほぼあっていると私は認識している。
ということは、今、銀行で並んでいる人がほとんど事業者関係だとすると、当分、この長い列は解消されないのではないかと考えられる。
そりゃ、そうでしょう。
並べばただなのに、ネットだとそこそこの金をとるんですよ。
こんな不況のおり、誰がそんな無駄な金を出すものですか。
(大企業は別だ。彼等はすでに銀行との専用回線ぐらい自前で持てるし、第一、銀行の方から人が処理にやってくるはずだから、)
銀行はインターネットの価値をあまり評価していないのではないかと思う。
セキュリティがややこしい、きわめてリスキーな手段だと思っているのではないか。
少なくとも私の知る銀行マンはネットにはあまり熱心ではない。
顧客との対応はネットよりも、実際に会うことが大事だ。
きっとそんな訓示が銀行内ではされていることだろう。
どこかの営業部などでも、やはり同じような光景があることだろう。
何しろ、普通の企業では、インターネットが業績を飛躍的に伸ばすことなど、まずありえないと思うからだ。
しょせん、日本の今の企業にとって、インターネットなんてそれぐらいの認識なんだと思いますよ、私は。
SOHOなんて、今の日本の企業では当分異端の扱いを受けると思う、SOHO=マイナー企業というイメージがある限り、e-japanなんて国策もいつ普及することやら、安部邦雄