既存の放送局は基本的にデジタル放送にネガティブであることは繰り返し述べて来た通りである。
彼等は、地上波デジタル放送のスタートはできるだけ延ばしてほしいと思っている。
いつまで?
とにかく、既存局が「もう?いいよ?」という迄だ。
既存局が一番困ること、それはデジタル局に新規参入が殺到することだ。
CS局は、まだ許容できた。
既存局を脅かす程の力はないと判断できたからだ。
BS局はやばい。
何故なら、NHKがリーダーとなって普及する可能性があるからだ。
だから、既存局はみんなBSデジタル局に参加した。
自分達が参加しなかったら、新規参入者にとられるだけだ。
そんな新規参入を認めると、いつか地上波にも影響してくる、それは困ると思ったからだ。
110°CSに参加した理由もよく似ている。
BSとアンテナもチューナーも共有できるのはやばい。
NHKのBSデジタル(ハイビジョン含む)を見る為に買ったセットで、110°CSが見れるのだ。
これにも新規参入者が殺到しかねない。
で、既存局は様々なダミー会社を使って申請し、辛うじて新規参入を最小限にすることができた。
既存局がやっているのは、権利の独占である。
自分達以外が放送に参画するのを許さないという強固な意志である。
そうでもしないと、デジタル時代に自分達は生き残れない。
非効率な経営をしてきた放送局は、新規参入者とのガチンコ競争に勝つ自信がないのだ。
確かに若干のアドバンテージはある。
番組制作ノウハウも、放送局の経営ノウハウも一日の長がある。
しかし、デジタル時代には、そんなものあっという間に意味がなくなる。
構造が変化するのである。
前の構造で有効だったノウハウが、新しい構造に効果があるかどうかは誰にもわからない。
それ以上に、既存局は過大投資しすぎという側面もある。
減価償却もすまない機材が、全く役に立たなくなるかもしれないのだ。
地上波デジタルをネガティブにとらえる記事が最近増えて来ている。
このままでは消費者が混乱する、だから延期すべきだ、と論調が変わって来た。
それはどうだろう。
消費者が混乱するといっても、それがどれほどのものだろう。
テレビにおける消費者の混乱は既にCSやBSデジタルの出現でそこそこ起きている。
CATVだって、最近の普及のスピードは予想以上である。
テレビを見る環境は、徐々に個別化しつつあるのは確かだ。
皆が同じような環境でテレビを見る時代は少しずつだが終りつつある。
テレビの買い替え需要は8年毎だから、それに合わせて地上波デジタル放送も考え直せなんていう記事もあったが、そんな昔の買い換えサイクルなんて果たして役に立つのだろうか。
無線LANがどこまで普及するかわからないが、後2年程したらLANでテレビを見る人も増えるのではないだろうか。
街中に無線LAN基地が置かれるようになれば、当然それはさまざまなコンテンツの供給基地にもなりうる。
言い換えればCATVと同じような形態の無線LANーTVが出現しかねないのだ。
移動体(車等)で見るのは難しいかもしれないが、家の中の固定テレビで見るのならこれで充分。
しかもマルチチャンネルである。
アンテナを複数個立てる必要も全くない。
もちろん、既存局はこんな情報決して流さない。
周波数を独占しているから、広告価値、媒体価値が高いのである。
マルチチャンネルの中の1つになれば、よほどのことがない限り、媒体価値は下がる。
だから、既存局は周波数の話ばかりしている。
デジタル化されても、前と同じ程度の媒体価値は維持できるように、新規参入者には決して周波数は渡さないという意志も強固に見える。
とはいえ、彼等の思惑がどうであれ、放送構造の変化は劇的におこってくるだろう。
抵抗勢力は何も道路や郵便や官僚の中だけにいるわけではない。
抵抗勢力としての既存放送局がどんな策動を今後も続けるか、じっくりと観察させてもらうことにしたい。
消費者としては、今後テレビやラジオは無料のままで続くのか?という疑問がある、NHKに金を払っているのだから、今後はそれと同じ額で、つまり追加出費がなくてすべてのテレビが見れるのが理想なのでは、何もNHKばかりに金をやる必要もないと、そろそろ消費者は思うべきではなかろうか、安部邦雄