関西の笑いに必要なつっこみの言葉のひとつが「そんなあほな!」
「あほいうな!」とか「ええかげんにしいや!」とか、色んなバージョンがある。
東京系の漫才師が関西の漫才師に勝てないのは、この「そんなあほな!」等のつっこみのバリエーションだという。
「冗談じゃないよ!」とか「バカいうな!」では絶対に負ける、客のつかみが違うというのだ。
私も、こういう東京風のツッコミがどうも中途半端に聞こえて仕方がない。
サマーズ(旧バカルディ)の三村氏が『クロコダイル・ダンディー』のCMで一生懸命突っ込んでいるのだが、明らかにすべっている。
「何でやねん!」「そんなんしたらあかんやろ!」「蛇刺すかー!?」とか言った方が、ぐっと盛り上がるのではないだろうか。
ま、関西人だから、そんなことを気にするのか知らないが。
映画への突っ込みというと、私は映画を見ながらよくこれをやる。
どう考えても、そんなことはあり得ないようなシチュエーションが出てくると心の中で思いきり叫んでいる。
「そんなあほなー!」
直ぐに思い出すのが、「ダイ・ハード」シリーズ。
そんなことあるわけないやろー!とツッコミぱなし。「アルマゲドン」もそう。あんなシチュエーションで隕石に着陸できるわけないやろがー!
「エアフォースワン」、気圧の差で、みんな落ちとるわー!何でハリソン・フォードだけが、腕の力だけで耐えられるんじゃー!ロボットか、お前は!
大体、スペクタルものとかSFものとかはこういうのが多い。
先日借りた「ミッション・トゥ・マーズ」なんかは人をバカにしとる。
誰が、こんな状況で別の着陸船に数珠つなぎで宇宙遊泳する気になるんじゃ。他に方法は幾らでもあるわ、そんなん、素人でもわかるわい。
その点、「2001年」のキューブリックは凄い。ツッコミ入れさせる間を与えない。
おかしくないか?と思っても、その疑問を映像で粉砕してしまう。さすが巨匠だ。
ここまで書くと、私はこういうツッコミを入れたくなるような映画を否定しているのかというと、これが違う。
さすが、アメリカ映画だと、かえって評価しているのだ。
日本人にはこれができない。シリアスな映画はとことんシリアスに作ってしまう。
おかしい、と疑問をもたれることを極端に嫌う。
荒唐無稽な映画とか、コメディとかは理屈の通らないシーンでも平気でとってしまうが、多少とも理屈のいるような映画だと、このツッコミなど絶対に入れられないようにとろうとし過ぎるのだ。
だから、持ち味が失われ、娯楽としてはあまり面白くない。
日本人じゃ無理なのだ。絶対に「ダイハード」は撮れない。離陸する飛行機の翼の上で取っ組み合いなんか誰もしない。
「ターミネーター」が何故時間を旅行したら裸になるんだ。ロボットだろ!おのれは。
特にターミネーター2の方だと、好きなように身体を変えられるはず。何で最初が裸やねん。
でも、アメリカ人はそんなこと気にしていない。
これは映画なのだ。面白ければそれでいいじゃないか。
ああ、そうなのだ。これこそ、本当のプロ作品なのだ。
日本人もくやしかったら、私が「ツッコメル」ような映画作ってみろ。
ただし、駄作をツッコムのは、オヤジギャクに笑ってしまうのと同じで、こちらが情けなくなるから勘弁してほしいが。
今だー!突っ込めー家来どもー!安部邦雄