あ?あ、外は雨と風でとんでもない状況だ。
早くこの欄の原稿書いて家に帰らないと、どんな目に会うかわかったものではない。
電車が止まったりしたら、悲惨である。
台風には、雨台風と風台風という分け方があるが、この台風は雨も風も豊富という印象だ。
あ?あ、家に帰り着いたらずぶ濡れだろうなあ。
憂鬱だ。
私のとんでもない台風経験というと、第二室戸台風の時の恐怖に近い体験である。
昭和36年9月16日。(まだ私は小学生)
最大瞬間風速は、室戸岬で84.5m/sだったという。
とにかく、とんでもない台風だった。
当時の家は、まだ強度のあるサッシのガラス戸というのがなく、木の枠でできたガラス戸だったため、風が吹く度に相当強い衝撃でガタガタ揺れるのだ。
一応、外側は板で補強をしているのだが、それでも揺れ方ははんぱではなかった。
私も家族と一緒に、一日縁側に出て内側からガラス戸を押さえていた。
ドーンと手に重い風がぶちあたってくる。
私が吹っ飛びそうなほどの力だ。
泣きそうになりながら、私は一日ガラス戸を押さえていた。
今でも、その時の恐怖を思い出すことがある。
特に今日のような風と雨が叩き付ける台風に出会うと必ずだ。
昼過ぎの2時頃であったろうか、風は一瞬やみ、外が明るくなったことがある。
台風の目にすっぽりと大阪が入ったのだと後でわかった。
太陽の姿さえ見えかけたほど、無気味な静けさがあたりを包んでいた。
そして、しばらくの小康状態の後、又、強い風が叩き付けるように吹きはじめた。
あんな経験はできれば二度としたくない。
その時、中之島公園が完全に水につかっているとテレビで伝えていた。
堂島川と土佐堀川にはさまれた中之島はすべて水におおわれていた。
電車(当時は路面電車)もバスも通行不能、第一外になんかとても出れるような状況ではなかったが。
そして、台風が去った。
台風一過というように、妙な虚脱感が後に残るのだ。
外は、木の枝や瓦などが至る所に散らばっていた。
根こそぎに倒れた樹木、垂れ下がった電線、そしてシラっとして何も言わぬ空。
台風は他人のところで猛威をふるうのは、そこそこエンターテインメントみたいで楽しめたりするのだが、自分のところに来るのだけは願い下げである。
本当、一度室戸並みの台風、経験してごらん。
とても、台風に対して平常心は保てなくなると思うよ。
今夜は更新はこれぐらいにして、早く家に帰ろう、安部邦雄