『スローなブギにしてくれ』、片岡義男の作品で映画化もされた。
ブギというのは、本来アップテンポなものだけど、それをスローにしろとは。
アイスクリームの天ぷらとか、炎の氷付けとか、ま、そういうイメージか。
でも、スローなブギにしてくれ、って本当はどういう意味なのかなあ。
さて、以上はイントロの話。
今回のメインはスロービジネスという新しい概念である。
阪本啓一さんという、パーミション・マーケティングを日本に紹介したビジネス・コンサルタントが提唱した概念だ。
勝手に訳させてもらうと、今までのビジネスの脅迫的な部分を取り除いて、自然に人間らしいビジネスをめざそうということだろう。
少し前「商人」でとりあげたことと似ている。
ネットビジネスは商人という機能をとりこむことができる。
ただし、人間の欲望を数値化し、それを限り無く無限大に導くマーケティングとか、人間性の商品化とか、自然に生きている人々を無理矢理市場原理に追いやるとか、そういった機能を取り除いた上でのことだが。
何かややこしいことを言ったかな?
阪本啓一さんの話に戻ると、この場合のスローとは、結局今までのペースを落としてみて、より人間性に立脚したビジネスを取り戻そうではないかということだと思う。
無理矢理、売上を上げようとしないこと。
何でもイイから、儲かればいいのだと思わないこと。
等身大で生きること、それもできるだけ誠実に生きること。
一言で言うなら、ガツガツするな、ってことではないだろうか。
経営者のひとりとして言わさせてもらうと、ガツガツするな、と言われてもなかなかできるものではない。
どこか、毎日脅迫されて生きているのが、営業マンであったり、経営者であったりするわけだ。
働いている側だってそうだろう。
今日我慢したら、明日はきっとイイ生活ができるって本当に信じられるだろうか。
今日いい生活して、明日は我慢するのでいいよ、俺は。
そんな連中も一杯いる。
「アリとキリギリス」のキリギリスはそう思って、我が世の春を送ったわけだ。
スロービジネスでは、キリギリスよりはアリになれ、と言っているのかも。
朝三暮四の話も関係してくる。
朝は三つ、暮は四つだと怒るサルが、朝は四つ、暮は三つと言うと、大いに喜ぶ。
これ、意味がわからない、という人も多い。
そう、少し高いところから見ると、どっちだって同じだと思うだろう。
ところが、渦中にいるとわからないのが人間なのだ。
先に楽しいことがあり、苦しみは後、と言った方が一般受けはいいのだ。
もちろん、真実を知るものの目はだませないが、普通の人は十分これでマインドコントロールできるということだ。
ポピュリズムとかいわれるのもこの一種かもしれない。
最近で言うと、減税をしますよー!とか言っておいて、しばらくしたら消費税をアップするなんてのが、朝三暮四の典型だろう。
何しろ、絶対数が七つしかないのだ。
要は、先に三つか四つかというだけの違い。
それで、怒ったり喜んだりする、それが人間というわけだ。
別に、国民を馬鹿にして言っているわけでもないと思うのだが。
ビジネスの話でいうと、とにかくガツガツせず、人のものを無理矢理ひっぱがそうとせず、嘘を言って金をまきあげようとせず、権力者にすりよって我田引水ばかり計ろうとするな、ということだろうか。
まず、みんながそれで幸せになればいい、それで便利になればいい、それで共に生きることができればいい。
昨日のfree & easyと重なる議論でもある。
今は、みんな不景気というイメージに脅迫されていて、少しでも利益を得たいとあせりまくりではないだろうか、一度みんなどん底に落ちれば、そこから又新しい秩序が生まれるのではと思うのだが、それは無理なのかもしれないなあ、安部邦雄