新宿駅東口を歩いていて、気がついた。
マシーンがない。
そう、そこには昨年の6月末鳴り物入りで、あるマシーンが設置されていたのだ。
名前は「デジブレイク」。
その時の説明の一節は次の通り。
東日本旅客鉄道と日本テレコムは、IT革命の時代に
相応しく駅を情報発信拠点とする施策の一環として、
共同で店頭設置型端末による音楽配信事業を開始致
します。
店頭設置型端末がデジブレイクである。
JR東日本と日本テレコムがやるのだからこれはすごい、いよいよ音楽配信の時代がやってきたなどと一部のマスコミが持ち上げていた。
大資本がやるのだから、失敗するはずがないとでも思っているのだろうか。
今までにもブイシンク、デジキューブ、ミュージックデリと、同じようなビジネスを仕掛けたところがいくつもあった。
そして、どこも全く事業は成功していない。
音楽を配信しMDに録音するというのが、これらの配信装置のパターンだ。
デジブレイクはどこが違うと言うのか。
おれたちは違う。
他の会社はコンテンツはインディーズしかないが、デジブレイクはエイベックスやソニーなど、今人気のアーチストのコンテンツがそろっているのだ。
これは絶対に成功する。
ふう?ん、まあそう思うんだったら、別にいいけど。
繰り返すようだが、音楽配信はコンテンツがないから普及しないのではない。
コンテンツを供給するシステムが、ユーザーに気持ちよく受け入れられるかが重要なのだ。
浜崎や、宇多田が簡単にダウンロードして聞けるのならまだしも、わざわざ、駅までMD持参で出かけ、お金を300円とか500円とか入れて、ダウンロードされるまでじっと立って待つ。
鬱陶しい話だ。
そうしなければ、浜崎や宇多田の音が買えないわけではない。
レコード店に行けば、パッケージつきでそれと同じぐらいの値段で売っているのだ。
何故、こんな鬱陶しいシステムを利用してまで手に入れたいと思うのだろう。
コンテンツではない、システムがDQN(最低)なのだ。
こんなのあたるわけないよ、例え、トヨタがやろうとサントリーがやろうと、こんなシステムじゃ誰も使わない。
時々、新宿駅に出かけた時、マシーンはいつもそこにあった。
人がよく通る一等地である。
しかし、その前に立ち止まる人はひとりも見なかった。
誰も使っていない、ま、しかたのないことだろうなあ。
そう思いながら、今日新宿を通りかかったと言うわけだ。
そして気づいた。
マシーンは撤去されていた。
ホームページを覗いてみたら、すでにサイトまで撤去されていた。
ヤフーの検索を見ると、6月末日で業務停止だそうな。
一年の命だったわけだ。
哀れと言うか、冷たいと言うか、あのマシーン達は今どこにあるのだろう。
これを持ってITは時期尚早だったなんて言う人も出て来そうだ。
ITなんて言っても所詮バブルの落とし子にすぎない。
私達は私達の今までのやり方で充分なのだ。
音楽業界が言いそうなことである。
人が集まるところにおけば、きっとあたるだろうとか、人気アーチストを仕入れることができたら、きっとダウンロードするだろうとか、非インターネット・ユーザーは簡単に思ってしまう。
一度、自分をネット・ユーザーの側においてみればいい。
どういうふうにすれば、ユーザーはダウンロードする気になるか、それがきっとわかるはずだ。
easy、free、light、simple、realtime、私がよく使うこれらの言葉がキーだということが実感してもらえるだろう。
サクサク感のないネットシステムは新たなストレスを産み出すだけなのである。
高い金を出してまで、理不尽なストレスを受けるなんて、絶対にゴメン蒙りたい。
そうじゃないかえ、皆の衆。
そうそう、speedyとかrapidなんていうのも重要なキーワードでしたね、安部邦雄