今から10年ぐらい前の話だ。
何か、昨日もそんな昔の話だったような気もするが、まあそれは許してね。
当時のオリコンだったか、ミュージックラボだったか、ミュージックリサーチだったか忘れたが、いわゆる音楽業界誌を読んでいた。(オリコン以外は、あぼーんしてしまったが)
レコード会社の宣伝担当役員のような方が3人程集まり、今後のレコード業界を占うという話をしていた。
異口同音に言っていたのが、時代の流れはパッケージからノン・パッケージに移って行くということだった。
CDとかビデオばかりが、音楽業界の商品ではなくなる。具体的にはまだあいまいなところがあるが、早晩ノンパッケージ・ビジネスが主流になるはずだというのだ。
レコード会社も今の形態でどこまでも行けるわけではないので、そのあたりを研究して行かないといけないとも言っていたはずだ。
それを読みながら、ふ?んと思った私。
パッケージ?ノン・パッケージねえ、で、どんな風にそれは普及するのだろうかねえ。
それから10年たった。
ノン・パッケージの具体的な形は、既にインターネットというメディアを通じて私達に見えるようになって来た。
さあ、レコード会社の宣伝マンが予言した時代がやってきたのだ。
研究成果をいよいよ発揮してもらいたい、頑張れ。
期待していた私。
しかし、レコード業界からは、何の成果も出て来ない。
挙げ句の果て、ノン・パッケージなんて時期尚早なんて言い出した。
パッケージビジネスで充分だ、余計なことを一般人はするな、とでも言いたげに。
ある人は言っていた。
他の業界人が、音楽配信システムを作って、それで商売しようというのは勝手である。
でも、コンテンツを持っているのは私達だ。
コンテンツもないのに、システムばかり作っても、何の役にも立たない。
音楽業界としては、音楽配信なんて時期尚早だと思っている。
憎たらしいことを言う人だなあと思っていた。
供給者がすべてを牛耳れると思っていたのだろう。
ユーザーは、おとなしくおれたちの作ったものを買えばよいのだ、という思考だ。
その1つの現れが、CCCDというコピープロテクトCDである。
かってのパッケージ?ノン・パッケージの流れを覚悟していた連中はどこへ行ったのだ。
あれは、あの時の意見で、今はそんなこと言ってられないのだ、ということかもしれない。
でも、ノンパッケージの時代にならざるをえないのなら、何故、他の会社よりも先に商品開発に取り組まないのか。
何故いつまでも横並びで、パッケージビジネスにしがみつくのか。
著作権をたてに、技術の進歩を阻害し、利用者の利便性を一義的に考えようとしないのか。
こんなに簡単にパッケージ?ノン・パッケージの技術が普及するとは思わなかったのかもしれない。
ブロードバンドが、どこの家庭にもあっというまに行き渡るなんて、当時の誰が思ったことだろう。
NTTがISDNを大々的に宣伝していたのは、まだ2年程前なのだ。
ノン・パッケージ・ビジネスの可能性は至るところにある。
何故音楽コンテンツをブロードバンド市場に投入しない?
何故いつまでもパッケージビジネスに固執する?
10年たっても、結局何も変われなかったのが、音楽業界というわけなのだろう。
これは音楽業界だけではない。
放送業界も、新聞業界も同じようなものだ。
いつまでも宅配やっている時代ではなかろう。
いつまでもゴールデンに巨人戦やっている場合ではなかろう。
長野県の県議会も同じだ。
時代は変わって行くのだ、すべてのものが、あらゆることが。
ああ、悩み多きものたちよ。
評論家的立場で無責任に理屈を並べていたものが、当事者になると、途端に慌て出して矛盾だらけのことを言い出す、結局傍目八目というわけか、私も例外ではないだろうけど、安部邦雄