久しぶりに家の近くの銭湯に行った。
浜田山にあるからだろうか、屋号を「浜の湯」と言う。
気付いたのだが、東京の銭湯は基本的に「XXの湯」というネーミングが多い。
桜上水にあれば「桜湯」とか松原にあれば「松の湯」というように。
大阪では「XX温泉」というのが多い。
私の記憶では、昔は大阪でも「XX湯」といってたはずなのだが、温泉ブームみたいなものがあってから、どこの銭湯も温泉というネーミングに変えたようだ。
ちなみに実家の裏にあった銭湯は「清水温泉」(既に廃業)と呼ばれていたし、今も実家に帰ると行く銭湯は「清滝温泉」という。
確かに清滝温泉は、子供の頃は清滝湯と言っていたはずなので、ここもどこかで温泉というネーミングに変えたのだろう。
あ、そうそう清水温泉の清水は町の名前(北清水町)からとったはず。
又清滝温泉は、清水と滝井という町の間にあったから清滝にしたと推測する。
東京と大阪の銭湯の違いは色々あるが、一番気になるのはやはり入浴料か。
これは東京の方が40円ほど高かったはず。
ただし、何度もいったと思うが大阪には洗髪料10円というわけのわからない制度がある、
次に、浴槽のレイアウトが基本的に違う。
東京では浴槽は一番奥に横に存在し、その上には書き割りで富士山などの絵が描いてある。
大阪は、浴槽は奥から出口にかけて縦にあるところが多い。
書き割りはなく、タイル画の方が一般的だと思う。
また洗い場も、東京では中央にあるのだが、大阪では壁際にある。
どちらがいいとは言えないが、東京では鏡の下から前に座っている人の体が見えるので、私は少し違和感がある。
東京の銭湯は基本的に木造で、古い造りの家という感じだが、大阪にはそんな古びたイメージの銭湯は少ない。
ま、このように大阪と東京の銭湯は違うのだが、同じなのはどちらも斜陽産業ということだろう。
東京に来て、時々通っていた銭湯がもう2軒も店を閉じている。
今は、どちらもマンションになってしまった。
大阪も同じ。
実家の裏にあった清水温泉も今やマンションになっている。
風呂屋のオヤジが寂しそうに呟いていた。
風呂屋は続けたかった。だけど釜がもう駄目になっていたし、煙突も老朽化して立て直す必要があった。
そのためには1千万円は必要らしい。
そんな金はないし、借りたとしても今のままでは赤字続きで返すあてがない。
残念だけど閉めるしかない。
どこも、このオヤジと同じ感想だろう。
設備の更新はもうできないのだ。
確かに今の釜や煙突がダメになれば、店じまいするしか他に道はない。
そういえば、前に実家に戻った時、駅前の「東温泉」が影も形もなくなっていた。
人の話では、そのそばにあった七福温泉も先日つぶれたということだった。
日本から銭湯が消え去る日も、そんなに遠い話でもないのかもしれない。
かっての銭湯にはたくさんのお客さんがいて、そういう層向けに色んな広告が貼ってあった。一番派手だったのは、映画のポスター。近くの8軒の映画館がすべて公開中の出し物を並べていた。銭湯の客と映画館の客は一致していたのだろうと今になって思うのだ、、安部邦雄