自分は正しいと、貴方は思えるか?
こんな質問をされると、まず困ってしまうだろう。
自分は、多分間違ったことはしていない、でも、それが正しいかどうかはわからない。
間違っていないからといって、正しいと言うわけではない。
最近、こういう合成の誤謬みたいな話が多い。
経済のジャンルで言うと、不良債権処理をすると言うのは、間違っていない。
ただ、それを今やっていいということではない。
まず、デフレを解消してからでないと、日本経済が破綻する。
しかし、じゃあデフレを解消する政策ばかりをやりはじめると、金融マーケットが、途端に不良債権をほったらかしにするんだったら、売り浴びせるという反応になる。
ますますデフレが進む。
しかたがないから、需要を支える為に補正予算を組めということになり、国債を余計に発行する。
日本の先行きますます不安となり、需要の回復がどんどん遅れる。
早い話、マーケットが求めているのは、不良債権処理による経営基盤が不安定な銀行を潰すこと(あるいは公的資金を入れて、今の銀行の経営陣を退陣させること)と、行き詰まっている企業をどんどん潰せということなのだろう。
一度、カオスの中に日本の産業ぶち込め。
それから、日本をリセット(つまり構造改革)しろと言うことなのだと思う。
リセットなんかしたら、今迄の既得権はすべてなくなってしまう。
おれたちはこれでいいのだ、おれたち以外を改革しろというのが既得権者のおおかたの意見でもある。
自分達は間違っていない、だから改革する必要はない。
あいつらは間違っている、だから改革しろ。
そんなことを皆言っていたら、絶対改革なんて起こらない。
自民党が今混乱しているのは、結局、間違っていないと言う連中に支持されながら、何らかの改革をしようということに起因している。
誰かだけをスケープゴートにして、それを改革することでカッコだけはつけようとしているのだが、マーケットがそれを拒否している以上、動きがとれない状況なのだと思う。
一体、こんな混乱をいつまで続けるのでしょうか?
で、表題の「私が間違っていたこと」ですが、実は、私は世の中には、自分より頭のいい、本当に凄い人が一杯いると思っていたのです。
だから、自分なんかが中途半端な理屈を言うよりも、こういったエリートさんが、誰も思いつかないような実に見事な解決策を提示するのを待った方がいいと、無邪気に思っていたのです。
しかし、この歳になって思います。
ほとんどのエリートは、理屈は達者だが、誰もが納得する解決策を明示するのは苦手なのだということを。
知識量が豊富で、過去の実例にも精通し、誰がどこで何を主張したかも良く知っている。
法的にはどこが問題で、行政的手続きを語らせても、実に見事な整合性を持って、説得することも得意だ。
だが、彼等は自分の力だけでは何もできない。
モノの見事なスケールでの解決策を、提示することもできなければ実行することもできない。
知行同一と言う言葉がある。
それが、出来ていない人がほとんどなのだ。
ごちゃごちゃ理屈言う前に、そこで跳んでみろ!
ギリシャの話を思い出した。
ロードス島というのがエーゲ海にある。
昔、あるジャンプの選手が、ロードス島で、大変なジャンプを行ったと言って故郷に帰って来た。
ロードス島には証人となってくれる者も大勢いると、彼は語った。
すると、一人の男が「よし分かった、その話が本当なら、証人などいらない。さあ、ここがロードス島だ。ここで跳べ。」
実際に跳べる奴など、ほとんどいないのだ、この国の為政者たちにも。
自分の存在が正しいかということも最近気になる、生きていることが正しいとはたして言えるのか、間違っても訂正出来ない人生、本当こんなことばかり考えていると、やる気なくす、安部邦雄