最近2chでよく使われる言葉に香具師がある。
「こうぐし」でも「かぐし」でもない「やし」と読む。
2chでは、DQN(ドキュンと読む)な奴を香具師と呼んでいるようだ。
DQNな奴っていうのは、例えば「素人のくせに玄人のようなことを言って、それで恥かいて青くなった奴」を指す。
奴(やつ)と言わずに香具師(やし)と言うようになったとか。
香具師って、見たことがある人は最近少ないのでは。
テキ屋さんを香具師と言うとしたら知らない人はいないだろうが、私としては香具師をテキ屋さんと言うのは違うような気がしてならない。
フーテンの寅さんはテキ屋だけれど、香具師ではない。
私はそう思うのだけどいかがかな。
香具師というのは、そりゃあ凄い芸です。
私が最後に見た香具師というのは、小学校の頃、ある神社にいました。
山伏の姿をして、何だかんだと言って人を集める。
駕篭の中の青大将を引っぱり出して、客に挑戦的に言う。
「この蛇を口から飲み込み、下から出す!」
そんなことができるのか、と集まった群集はわいわい言う。
もちろん、中にはサクラもいるだろう。
山伏は何度も何度もこの言葉を繰り返す。
人はどんどん集まる。
ある程度集まると、山伏は話を変える。
「蛇を飲み込んで下から出すと言っても、信じられないだろうが、これこそ修業のたまものである。私は高野山で修業をし、この術を会得した。」
へえ?と集まった衆はさらに好奇心をかきたてられる。
「如何に私が修業をしたか、それをお見せしよう!」
蛇は、駕篭の中に逆戻り。
そして、今度は一本の釘のような太い針を持ち出す。
「この針を腕に刺し、向こう側まで出してみせる。」
蛇を飲み込む話よりスケールダウンするが、これは実際にやってみせる。
腕に突き刺した釘を万座の衆に見せる。
ま、これはこれで凄い。
しかし、それを抜いてから血が次々に出てくる。
オッサン、タオルで必死で拭っているが、子供心にちょっと笑う。
オッサン、そこから話が飛ぶ。
このように修行した私が、持ち歩いているのがこの石である。
この石は霊験あらたかな石で、けずって毎日飲めば万病に効くのなんのかんの、と言って、集まった客に渡す。
客はそれを怪訝な表情で受け取るが、そこでひとこと。
これを特別に皆さんにおわけする。
一つ1000円、もう受け取った以上、これを返すなんてことを言うと、立ち所に悪い邪気が家を襲うであろう。
さあ、皆さん買った買った。
最後はほとんど脅しである。
蛇を飲む話はどこへ行ったと言いたくなる。
つまり、香具師とはこういう人をさすのだ。
ガマの油売りもそう。
どこか、自分の身を犠牲にしながら、いんちきなものを売る、これが香具師である。
単なる縁日の店を出している連中を香具師なんて呼のは、芸に対する尊敬心がなさすぎる。
2chの連中にも言いたい。
香具師をなめるなよ!
ま、今日はそういうところで。
香具師は元々薬師と関係がありそうだ、つまり薬を調合したりする人だったのだろう、香というのは薬の一つだったから、ある時から香具師をやしにあてたのだろう、間違っているかもしれないけれど、安部邦雄