大阪の子守唄というのがある。
正式なタイトルは知らない。
「天満の市」と書いたのもある。
♪ねんねんころいち、天満の市で、大根(だいこ)そろえて船に積む?
親父が私を寝かせる時に歌ってくれた。
母親が歌っていた記憶はない。
意味は子供だからよくわからなかったが、今ではだいたい理解できる。
♪船に積んだら、どこまで行きゃる、木津や難波の橋の下、
当時の情景が見えて来る。
昔あった天満の青物市場、そこで野菜を積み込み、各地へ運ばれる。
この場合は、荷出し港で有名な木津や難波へ運んでいるわけだ。
♪橋の下には、カモメがいよる、カモメとりたや、網ほしや?
カモメがいたのだ。
ユリカモメは大阪を表す鳥でもある。
今でも中之島に行けば、ユリカモメが一杯いる。
一時期、全く見なかったのに、どこから舞い戻ったのだろうか。
さて、この子守唄、森山良子さんも自分のアルバムの中で歌っている。
ところが、メロディーが私が親父から聞いたのと微妙に違う。
MIDI音源もあるのだが、こちらは全く森山さんのバージョンと一緒。
もちろん、正式なメロディーはこれなんだろう。
私が聞いたメロディーは親父が作曲したもの?
まさかね。
親父は、きっと自分の親から聞かされたものなんだろう。
それでなければ、いつも同じメロディになるはずもない。
どちらが好きか。
もちろん、私が親父に聞かせてもらった方だ。
森山バージョンは、私にとっては少しも懐かしくない。
むしろ、メロが違う為にかえってイライラする。
だから、私は親父から聞いたメロディを、例え正式でなかったとしても、後世に伝えたいと思う。
自分が伝えなければ、誰が伝えられる?
そんなものって、誰でもが形は違えど持っているものではないだろうか。
先人がなくなれば、一緒に消えてしまうのでよいのか。
貴重な財産を、そこで失ってよいものだろうか。
皆さんはどんなものを継承されたりしているのだろう。
ただ、私の悲しいところは、子供がいないため、継承する主体がいないということだ。
人の子供を子守唄で寝かせるというシチュエーションなど滅多にない。
大体、毎日、毎日繰り替えして歌わないと、子供の記憶には残らないだろう。
文化とは語り継ぐべきもの。
私は、先人が残した珠玉の言葉の数々を皆と一緒に伝えて行きたいと強く願っている。
ところでsegawaxにしてもこのサイトの管理人も子供を寝かせる時は子守唄歌っているのだろうか、それともそんな風習、今では廃れてしまったのだろうか、安部邦雄