さて、えらいとばっちりで、上司からスポンサーに行って情報をとって来いと命令された私。
数日後、大阪の少し辺鄙なところにある、その本社へ飛び込みに行った。
忙しいから帰れ帰れ、ぐらいは言われるかなと思っていたのだが、極めて丁重に応接室に案内されてお話をきくことができた。
私は、現在こういうプロモーションをさせていただいているのですが、お聞きでしょうか?と丁寧に聞いた。
会議で、担当が報告していた内容を私なりにまとめて話したのである。
すると、担当の方は、いえ、そんな話は初耳ですとの返事。
そんな放送局の話は一度も聞いたことがないとまで言われてしまった。
何だそれ?という気持ちと、やっぱりねえという気持ちがないまぜになった。
担当の営業は、代理店の適当な思惑にふりまわされていただけなのだという感想を持ったわけだ。
それから、しばらく私なりに媒体の説明などをさせてもらい、何かありましたらよろしくと頭を下げて帰ってきた。
その方は、とてもいい人だったが、出稿等はすぐにはありえないと私は判断した。
もっと、スポンサーのニーズを研究し、出稿計画に対して知識を得てから話をしないと、時間を無駄に使うことになると私は思ったからだ。
というわけで、次の会議にその時の報告をして、プロモートするなら、こういうことをクリアして、プランニングをしないと無理ですと意見を述べた。
上司の反応は、どうだったか?
答は無反応だ。
まさか、直ぐに行くとは思わなかったようだし、私が得てきた結果も、どうせそうだろうというものだったのかもしれない。
代理店の話を、さもスポンサーがそういう出稿プランを立てているかのように言った担当の営業マン。
おそらく、彼が会議で得々と話をした情報の半分は、こう言った二次情報、三次情報なのだろうと思った。
こういうのは、別に彼だけではない。
それを命令した上司も、所詮同じ穴のムジナであると私は認識していた。
一次情報を速やかにゲットしてきた私に無反応だったというのが、彼の資質を表しているのだ。
一次情報を基本にして動く、それが営業マンだというのが、「スポンサーに行ったのか?」という言葉の中に表われているはずなのだ。
それなのに、何だこの上司は。
二次情報に激しく反応するくせに、一次情報には無関心かよ。
ま、こんなこと書くと悪口になってしまうので、もうやめる。
繰り返すが、二次情報だけで動くなということだ。
必ず一次情報を確認せよ、邪魔臭くとも、億劫でも、気後れしようとも。
できなければ、分かった顔して世間を歩くのはやめてもらいたい。
それを強く主張しておく。
営業時代って、人間同士の格闘みたいなものが毎日あって、知力や体力の勝負という感じだった、精神力の弱いやつ、判断力の鈍い奴には営業は辛い世界である、私は自分では成績はよかったと思っているが、楽しかったという実感は少しもない、安部邦雄