身体の調子が戻り、寒さもだいぶ和らいだので、夜のウォーキングを再開している。
川沿いに植えられた梅の木に赤い花や白い花が咲き、春の気配すら感じる今日この頃だ。
夜の空には明るい星があちこちに光っている。
オリオン座のベテルギウスとリゲル、大犬座のシリウス、子犬座のプロキオン、双子座のポルックス、春の星座の獅子座のレグルス等の1等星の間に、木星、土星、火星の惑星が更に明るく輝いて華やかだ。
神田川沿いを、ややスピードを上げてウォーキングを続ける。
アヒルのようなグエ、グエ、という鳴き声。
もちろん、アヒルではない。
カルガモの群れが、川の澱みで声を上げているのである。
20羽程度はいるだろうか、冬になるとどこからかここへ飛んで来るのである。
欄干から川を見ていると、向こうから見なれない猫のような動物がこちらへトコトコやって来る。
あれ?と思ったら、それは狸だった。
向こうもこちらに気づき、顔をこちらに向けながら動きを止めた。
うわっ、見つかってもた、という戸惑いの顔。
しばらく、こちらを警戒したままだ。
東京でも、ここは都心からそれほど離れてはいない。
それでも、こんな野生の狸がまだ生きているのだ。
お互いに見つめあいながら、私は人知れず彼等がこの都会の中のどこかで巣を作っているのだと思い、感動を覚えたりした。
頑張れよ、と声をかけ、私はその場を離れウォーキングを続けた。
やがて桜の蕾がふくらみ、遊歩道にヒキガエルもあらわれる。
かくて、年は回り、人は齢を重ねるのだろう。
来年もこの風景を見ることはできるのだろうか。
亡くなった我が友が、昨年桜を見ながらそう言ったことを思い出す。
失った寂しさは、まだまだこれからなのかもしれない。
狸に会うのは本当に久しぶり、前は映画「平成狸合戦ポンポコ」が作られた頃だった、まだ都会にいたんだなあと感心したものだった、安部邦雄