私は、昔つとめていた放送局に行って、ある人間を問いつめた。
どういうことだ、おまえの責任はどこへ行った、何を勝手なことを言っているんだ。
相手は、憮然として立ち上がり、冷ややかに私を見ていた。
そのあざけりを含んだ目を見て、私は途端に冷静になった。
しまった、言い過ぎた。
言わなくてもよかったことだった、これで私は又ひとり完全に敵を作ってしまった。
後悔の念が、ふつふつと浮かび上がる。
立ち尽くす私。
何てことだ!
叫びそうになって、私は目がさめた。
何だ、夢か。
しかし、不満が一杯たまっているんだろうな、夢にまでこんな情景が出てくるなんて。
人をボロクソにけなしたら、それで何か解決するとは思っていない。
そんなことをすれば、相手を傷つけ、修復できない関係になるだけである。
あえて敵を作る必要はない。
無理して味方を作る必要もないと思うが。
いくら自分がスカっとするからと言って、思っていることを全部口にするのは愚の骨頂だ。
が、そんなことを少しも口にしないで我慢するということも精神的にはよくない。
要はバランス。
言うべきことを、相手の機嫌をなるだけ損ねないで言うテクニック、それを身につけないといけない。
なかなか難しいことだが。
てなわけで、現在産みの苦しみに耐えている最中。
気分的には、昨日のような歌心で自分をごまかすしかない状態である。
しかしまあ、関係ない連中は言いたいこと言ってくれるよなあ、俺がお前に一体何をしたと言うんじゃ、安部邦雄