郷原信郎「検察の正義」(ちくま新書 2009)
小沢一郎氏の「政治とカネ」問題で、ユニークな視点から持論を展開している郷原氏。
検察の正義の中の次の論点は、確かにそうだったという意味で納得できる。
裁判員制度、取調べ可視化など、日本の司法はこれから時代にあった変化が望まれているのがよくわかる。
自分のためにも、残しておきたい。
《日本の刑事司法の特徴》
1.刑事司法が対象にしてきたのは、倫理的・道徳的に許されない行為であり、行為に対する否定的評価が明白な行為。
そのような否定的評価の対象となる犯罪事実を、証拠によって認定し、その行為の悪性に応じた処罰を行う、というのが刑事司法の役割であって、その行為についての社会的価値判断は不要。
2.対象とする事実は、過去の犯罪行為であって、進行中の社会生活や経済活動そのものではない。過去に発生した行為に対して刑事処罰を行うことで、その問題に「後始末」をつけ、その行為が社会に与える影響を最小化することが目的。
3.対象とする人間は、そのような反社会性が明白な行為を行った「犯罪者」であり、多くの場合は社会からの逸脱者。
一般的な社会生活や経済活動を営んでいる一般の市民や経済人とは異質な存在。
そのような「犯罪者」は社会から排除されても、社会そのものに与える影響はほとんどない。
このような日本的刑事司法の中核となってきたのが「検察の正義」。
組織内ですべての判断を行い、その説明を求められることがない、という組織内で完結した「正義」の世界は、刑事司法の対象が、一般の社会とは切り離された特殊な領域であり、一般社会の価値判断とは切り離された独自の判断を行うことが可能だったからこそ維持できるものだった。