子供の頃に聞いた言葉で、よくわからないが何故か脅迫的に耳に入ってきた言葉というのがある。
その一つが「子とり」。
外で遅くまで遊んでいる子供に、母親が呼び掛けるフレーズ。「子とりが来るでえー、はよ家に入りやー。」
「ほらほら、子とりが来るでー!」
子供心に余計な恐怖心を植え付ける大人の言葉だ。
で、その子とりだが、つまり子を取る恐いオッサンが来るでーというわけなのだ。
大阪以外だと、お巡りさんが来るよー、というらしい。
お巡りさんが来るのが何が恐いんだと思うのだが、きっと留置所(ブタ箱)に入れられるよ!と言って脅すのだろう。
ただ、きっと私はお巡りさんでは恐くなかっただろうと大人になった今でも思う。
やっぱり、子とりの方がずいぶん恐い。
子とりはたいてい夕まぐれにやってきて、表で遊んでいる子供を捕まえる。
人さらい、とも言った。
で、捕まえた子供はみんなサーカスに売られ、檻の中へ入れられて、遠いところへ連れていかれるんだよ、と大人は言う。
だから、早く家に入れ!そんな目に会いたいのか!
ひどい話だ。
サーカス団の人はたまったものではないだろう。
サーカスで子供達が空中ブランコとか玉乗りをやっていると、大人は又耳のそばでささやく。
「あの子も子とりに取られたんやでえ。」
このイメージは今でも完全には消えていない。本当に大人はろくなことは言わないのだ。
角兵衛獅子もよく似たイメージだ。
「親のない子は旅から旅へ 流れ流れて角兵衛獅子?」中村錦之助の歌、美空ひばりの悲しげな表情や涙顔、それらが、今も子とりに取られた子供達のイメージと重なって、いやあな感じになるのだ。
親方に鞭で叩かれ、逆立ちの稽古を毎日し、うまくできなかったら食事抜き。可哀想ー!
本当に親は何を考えているのだ!
こんなイメージを子供に植えつけないと、遊びに夢中の子供は家に帰って来ないのか。
そんなわけはない。
これは過剰防衛だ!ひどすぎる。何が子とりだ!そんな奴おるか!
でも、子供の皆さんは、夕暮れまで遊んでいちゃだめですよー。カラスと一緒に帰りましょうねー。
おててつなげる、女の子がほしい、安部邦雄