1?2週間に一度顔出すインタリアン・レストランに行く。
店員は私の顔を見るとたいてい「いつものでいいですか?」と聞く。
「あ、お願いします。」丁寧に答える私。
出てくるのは、「イカとキノコのパスタ」。
少し炒りごまをふる。醤油味が舌にここちよく響く。
近頃、行きつけになった散髪屋に行く。
店の兄ちゃんが聞いてくる。
「いつものでいいですか?」
「あ、お願いします。」
何か答え方も一緒。
耳に髪が少しかぶる程度に切りそろえてもらい、その後、念入りにマッサージしてもらう。
とても気持ちいい。
飲み屋に行く。
おばさんが私を見て言う。
「いつものでいい?」
「あ、いつもの。」
スーパードライの中瓶が突き出しとともに出てくる。
ぷふぁ、うまい!
そこで気がつくのだ。
何て私はワンパターンなんだろうと。
いつものでいいですか?とよく聞かれるのだ。
服屋に行っても靴屋に行っても。
「いつものいいのが入ってますよ。」と呼びかけられると、つい買ってしまう。
何なのだろうね、この行動パターン。
寿司屋に行っても「はい、いつものやつ」と言って、ゲソの握りが出てくるし、そば屋に行けば「大盛り?」なんて向こうから聞いてくる。
それとも同じ店ばかり行く癖があるのかもしれない。
邱永漢さんなんか、70歳をとっくにすぎているのに、まだ3回に1回は新しい店で食事するという。
新しい店にこそ新しい生きた情報があるのだ、ということらしい。
立派としかいいようがない。
私なんて、結局邪魔臭がりなんですかね。
他の人に連れていかれない限り、そんなに新しく出来た店に行ったりはしない。
FM大阪東京支社に林君という大学の後輩がいるのだが、こいつが又とんでもない新し物好き。
新しい食い物屋が出来たら、とりあえず入ろう、入ろうとうるさい。
今まで食べたことがないメニュー品を見つけると、どれだけお腹一杯でも、これ何?これこれ、これもって来て!と必ず注文する。
そんな不味そうなもの頼むなと言う私に、「そんなもの食べてみないとわからない。」と反論。
案の定、不味かったりするのだが、「うん、これはやめた方がいいですね。」などとシレっとして宣うのだから、これはもう何ともはや。
百聞は一見にしかず、ではあるが、ここまで何でも試さなくともよさそうなものだ、といつもため息が出るほどだ。
私のように、同じことを繰り返しているのがいいのか、新しいものに常に挑戦するのがよいのか、さて、どちらがいいのだろう。
ま、そういう私も、新しいことに挑戦するのはそんなに嫌いな方ではないのだが、気付いたら同じことを繰り返していたというだけなので、個人的にはどうでもいいようなことかもしれないなあ。
この更新欄も、知らぬ間に「いつものでいいですか?」という断り書きが必要になるかもしれない。
落語の枕ではないが、お馴染みの馬鹿馬鹿しいお笑いで恐れ入ります、と言って毎度始めるのも又一興かな。
てなわけで、そろそろお時間。又のお越しをお待ちしております。
♪今日のお越しをありがとう、岩オコシ、粟オコシ、又お越し?
パート2のギャクってまだ通じる?安部邦雄