高校時代、サッカー部であったことは前に話したと思うが、サッカーのルールの中で一番手こずったのがオフサイドであった。
完全に攻撃体制にあると認定されない限り、相手の守備ラインより、攻撃側が前にいてはいけない、そういう類いのルールである。
アイスホッケーにもあるし、ラグビーにもアメフトにもオフサイドはある。
で、サッカーのけしからん(と昔はそう思った)のは、相手にオフサイドをさせるような動きをわざと守備側が行うことである。
人間は、こういう性向がある動物だから、こういう状況に陥ると、どうしてもこういう動きをするはずだ。
だから、こういう状況を人為的に作れば、面白いほどトラップにひっかかる。
そのパターンは、こういうのとか、こういうのとか・・。
そんなミーティングをやる。
実践で、そういうフォーメーションを作り、簡単なサインでオフサイド・トラップをする。
といっても、私の高校は弱小チームだったし、一度攻められはじめたら冷静に情報を交換することなんてできなくなる。
目の前の蠅を追うのに精一杯。
攻める方がかえって冷静。
トラップなんか全くきかないし、逆にこちらがばかばかオフサイドをとられる。
つまりですね、トラップは結局冷静に状況を見れる人物が、ほとんど本能的にしか動けない興奮気味の動物を捕獲するシステムなわけですね。
スポーツって、結局精神的に優位に立った方が圧倒的に有利なゲームといえる。
とにかく、ルールというのが、常にこういったトラップを必然的に作り出す属性を持っている。
ルールを法と言い換えてもいい。
法に抜け道を探し出して、非合法すれすれの活動をしている連中と相通ずるものがある。
どんなルールにも、必ず不備はある。
その不備をうまくついて、自分に利益がもたらされるようにするのは、人間なら誰しも考えてしまうことだ。
つまり、こういう脱法行為というのは、オフサイド・トラップと同じということになる。
オフサイドしたものが悪いのであって、トラップを仕組んだ方の責任ではない。
しかも、何も好んでオフサイドをしようとしたわけではない連中を、人間の弱味につけ込んでオフサイドを結果的にさせてしまうわけだ。
オフサイドはルール違反だ。
しかし、わざとルール違反をさせて、相手からペナルティをとり、自分の利益にすることが奨励されたりしているのは、けしからんことではないだろうか。
人間なんて、善意だけで生きていたら絶対損する、そんな処世術を学ばせるつもりなのだろうか。
だったら、学校教育でそれを正面から学ばさせるべきではなかろうか。
人を騙してはいけないとか、善意だけで人間は世の中を生きるべきだとか教えるのは別にかまわない。
しかし、その人間の気持ちを利用して、あなた方に大変な不利益をもたらせる連中が普遍的に存在することもきっちり教えるべきだ。
しかも、あなた自体が、容易に人にトラップをかけて、自己の利益のみを追求する側にまわる可能性があるということを。
「スターウォーズ」の暗黒のフォースは、自己の利益を追求した時から、内部で膨張し、正しいフォースを駆逐するという。
私達の中のダークサイドを冷静に見つめる目が、これからの時代には必要になっている。
自分が暗黒のフォースに支配されない為に、世の中の無数のトラップを指摘する義務がある、それが今日の私の結論だ。
事業をやっているとトラップって本当に多いですよ、別に儲けなくてもいいような事業なら、トラップにはひっかからないけれど、少しでも儲けようと思えば簡単にトラップにひっかかる、そうですね、競馬の馬券を買う時の気持ちに似てるかな、安部邦雄